今回は世界最大級の保険・再保険ブローカーであるAonが2021年9月29日に発表した調査結果を紹介する。タイトルを和訳すると「変動性への新たなアプローチ:より良い意思決定の重要性」ということになるかと思うが(注1)、これは新型コロナウイルスによるパンデミックを経験した企業経営者らの意思決定に、リスクマネジメントがどのように寄与したかを明らかにしようとするものである。
調査は米国、EU諸国、および英国にある、従業員数が500人以上の企業の経営層および上級管理職(注2)800人を対象として、2021年8月から9月にかけて行われた調査の結果をまとめたもので、調査結果は下記URLで公開されている。
https://www.aon.com/new-approach-to-volatility-better-decisions-report/index.html
(PDFなどでダウンロードするのではなく、Webブラウザで読めるようになっている。)
調査結果は次の7つのセクションに分けて整理されている。なお最後の「Featured Insights」には、今回発表された調査結果をまとめる上で考慮されたデータへのリンクがまとめられている。
- Overview(概要)
- Economic Outlook(経済の見通し)
- Pandemic Preparedness(パンデミックへの備え)
- Appetite For Risk(リスク選好)
- Better Decision Making(より良い意思決定)
- Future Success(将来の成功)
- Featured Insights(考慮された洞察)
本稿ではこれらの中から、筆者が特に興味をひかれた「Appetite For Risk」と「Better Decision Making」に掲載されているデータの一部を紹介する。
リスクや意思決定へのアプローチの変化
図1は「Appetite For Risk」というセクションに掲載されているもので、パンデミックの影響下においてリスクや意思決定へのアプローチがどのように変化したかを尋ねた結果である。
いずれも、リスクの検討対象を広げ、よりリスクに対する理解を深める方向の選択肢であり、また回答結果も70〜80%の間で大差ないように見える。ところが、パンデミックの影響で弱体化したと感じている企業と、パンデミックの影響でより強くなったと感じている企業との間では、これらの認識が若干異なっているという。
Webサイト上のグラフでは、それぞれのバーの上にマウスカーソルを置くと、パンデミックの影響で弱体化したと感じている企業と、より強くなったと感じている企業との間での差が表示される。上から4つに関しては概ね4〜8ポイントの差にとどまっているが、最も下の「Focused on the interconnectedness of different risks」(異なるリスクの間の相互関連性に注目した)で10ポイント、下から2番目の「Integrated risk assessment into decision making」(意思決定にリスクアセスメントを統合した)で12ポイントの差があるという。このような結果から、強い企業ではパンデミック対応において、リスクに対して総体的な見方(holistic, integrated view)ができたと指摘されている。
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