事業継続マネジャーの役割の変化

図1は事業継続マネジャー(注3)の役割がパンデミック以前と現在とでどのように変わったかを尋ねた結果である。調査では、左端の「Purely Operational」(完全に実務的)を0、右端の「Purely Strategic」(完全に戦略的)を100として、自分自身の状況がどのあたりになるかを尋ねており、パンデミック後の方がより「戦略的」な方向に寄っていることが分かる。ここで「戦略的」(strategic)とは、大まかに言えば、より経営的な観点から物事を考えるというような意味合いである。ちなみにBCIの「Good Practice Guidelines」(注4)ではBCPにおける緊急事態対応体制をStrategic team/Tactical team/Operational teamの3階層で整理されており、Strategic teamは最上位レベルの意思決定を行う、経営層によるチームと位置づけられている。したがって本調査における「strategic」も、経営層により近い立場に立って考えるというニュアンスを含むと考えられる。

画像を拡大 図1. パンデミック前後で事業継続マネジャーの役割がどのように変わったか(出典:BCI / The Future of Business Continuity & Resilience Report 2021)

この調査結果に関して紹介されている回答者からのコメントなどによると、パンデミック対応に関して経営層から意見を求められる機会が増えたことに伴い、事業継続マネジャーおよび担当部門の、事業継続やレジリエンスに関する洞察力(insight)などがより高く評価されるようになり、その結果として戦略的な意思決定により深く関わるようになったようである。読者の皆さまの周りでそのような変化はあっただろうか?

また、パンデミックによって最も大きく変化したことの一つは就業環境であろう。在宅勤務やウェブ会議などのソリューションを導入する企業が急増したが、パンデミックの長期化によって新しい就業環境が定着しつつあり、パンデミック収束後も在宅勤務などの継続を検討する企業も少なくない。