問題の要因を分析した上で解決策を講じる
ルールが守られないリスク
株式会社フォーサイツコンサルティング/
執行役員
五十嵐 雅祥
五十嵐 雅祥
(一財)レジリエンス協会幹事。1968年生まれ。外資系投資銀行、保険会社勤務を経て投資ファンド運営会社に参画。国内中堅中小製造業に特化した投資ファンドでのファンドマネジャーとしてM&A業務を手掛ける。2009年より現職。「企業価値を高めるためのリスクマネジメント」のアプローチでコンプライアンス、BCP、内部統制、安全労働衛生、事故防止等のコンサルティングに従事。企業研修をはじめ全国中小企業団体中央会、商工会議所、中小企業大学校等での講師歴多数。
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□事例 守られないマニュアルや手順書
・A社は創業以来、右肩上がりに業績が成長している企業です。成長を続けている企業だけに、社員は全員多忙を極めています。最近、A社では顧客との間でトラブルが頻発するようになりました。A社では、顧客対応に関するマニュアルが整備されていましたが、業務内容の増加や使用するシステムの進化に伴い、そのマニュアルの数が増加していったのでした。社員はマニュアルの存在は分かっていましたが、「時間がない」「該当部分を探すのが面倒」といった理由で確認しないままに業務を行い、その結果、トラブルが発生していました。
・製造業であるB社では、工場内の射出成型機の安全装置のスイッチを切ったまま作業をすることが常態化されていました。成形機には扉を開くと機械が全停止する安全扉が設けられていましたが、成型機の金型に異物が混入した時の取り除き作業などの際に、安全装置が働いて機械が全停止すると「再度起動までに時間がかかる」「成形中の樹脂を廃棄処分としなければならない」などの理由で生産性を重視して意図的に無効にしていたのでした。B社では「過去に重大な事故が起こったこともないし、この程度ならば大丈夫だろう」と考えているようです。
・建設業のC社では、建設現場で行うべき作業手順が「手順書」として決められています。しかしながら実際の現場では、手順書通りに行われている作業はおよそ半分であることが判明しました。C社の役員は「手順を守らないとは、けしからん!」と怒り心頭だとのことですが、現場では「実際の動きに即していない手順が多くあり、いちいち守っていたら仕事が終わらない」と言っていてラチがあきません。C社の社員の間では「実態に合っていない手順書があり、ほとんどの人がそれを守っていない状態では、いつ重大事故が起きてもおかしくはない」と思っています。
□解説 ルールが守られない理由
ほとんどの企業ではルールやマニュアル、手順書を作成し、それを順守するように定めていると思います。しかしながら、そのルールなどを100%守って仕事をしていると胸を張れる企業は、そう多くはないのではないでしょうか。
「人はなぜルールを守らないのか?」については、いろいろな研究がなされていて、多くの論文や書籍などで解説されています。そこに共通する理由として多く挙げられているのが以下のようなものです。
(1)ルールを知らない、または忘れている
(2)ルールの意図や目的を理解していない
(3)ルールに納得していない(ルールを守ることはデメリットがあると思っている)
(4)ルールを守っている人が少ない
(5)誰も見ていない(チェックされない)
(6)守らなくても罰せられない
(7)守らないことで得られるメリットの方が大きい
(8)ルールを守っても誰からも評価されない
まずはこれらの理由をよく理解しておくことがとても重要です。もし、自分たちの会社でルールを守られない状況が多くあり、改善が必要だと思った時に、単に「ルール順守の徹底とその教育」といった対策だけでは、恐らく解決に向かうことはないでしょう。「わが社でルールを守られない状況が発生しているのは、(1)~(8)の中のどこに問題があるからなのか?」を考え、この部分にアプローチをして改善しない限り、真の問題解決にはならないからです。
これを踏まえた上で、事例にある3つの会社の問題を考えていきます。
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