2020年10月、米・カリフォルニア州の山火事(写真:ロイター/アフロ)

最後に森林火災のリスクについて触れておこう。ここ最近、オーストラリアや米・カリフォルニアで「史上最悪」といわれる山火事が立て続けに発生。日本でも2月の栃木・足利市に続いて4月には群馬・みどり市で山火事が起き、全国的なニュースになった。地球温暖化による気候変動の影響を指摘する声も多い。

結論からいえば、森林を含む世界の火災面積はこの20年間大きく変わらず、逆に漸減傾向だ。森林火災による災害リスクが高まっているか否かは、地域条件に依存する。

●世界における年間火災面積の推移

具体的には大陸性気候や地中海性気候の乾燥地帯で特に夏に乾燥する地域、かつ土地利用によって森林の開発が進み、人の活動との接点が増えている地域は今後、森林火災が増加するとともに大規模化、激化する可能性がある。

※本章では、人為的要因で起こる山火事を「森林火災」、自然に起こる中立的な山火事を含めたものを「山火事(広義)」と定義

「燃料蓄積」状態の森が増えている

記憶に新しいところでは2019年から2020年にかけて、オーストラリア南東部を中心に10万平方キロ以上もの森が山火事によって焼失した。

本来、オーストラリアで山火事は珍しくない。乾燥した台地では、干ばつが強くなると「雨をともなわない雷」によって自然に森に火が入る。いわば自然循環システムの一環で、山火事による生態系のかく乱が新たな植物の生育を促したり、生物の棲み処を確保したりする側面もある。

ただ、こうした自然循環で焼ける森は、近年の平均をとればせいぜいオーストラリアの森林面積の1%程度。これが2019年~20年の山火事では、一気に20%以上も焼けてしまった。

原因は複数ある。横浜国立大学大学院環境情報研究院の森章教授によると、一つはフューエルロードアップと呼ばれる「燃料蓄積」だ。

オーストラリアの森はもともと、ヨーロッパ人が来る前は先住民が火入れをするなどして土地を活用。そのため、近代以前は自然現象に加え弱い人為的影響もあった。が、ヨーロッパからの入植者は森に火が入る現象を問題視。18世紀後半以降、火の見やぐらなどを設けて森林の監視を強めてきた経緯がある。

こうした近代的価値観は山火事を抑制したが、一方で本来あるべき自然循環を阻害した。「結果的に、燃えるべきものが燃えずに残っている、つまり森に『薪』が貯まっている状態をつくり出した。そこに乾いた夏が到来し火が入ると、これまで以上に大規模な山火事になる」

最近は過去の反省から人為的に森に火を入れて貯まった『薪』を減らそうとしているが、オーストラリアの広い地域では依然として燃料過多の状態にある。

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