2021/05/12
【オピニオン】コロナ火に気を付けろ
PART2 企業の火災リスクが高まっている理由

火災統計に表れていないからこそ注意
リスクの大きさは「発生確率×被害の度合い」で評価される。コロナ禍がそれらにどの程度影響するかは分からないが、序章で紹介したSpecteeのデータが正しいとするなら、火災のリスク評価はかなり押し上げられてもおかしくない。
その要因は、一般家庭でいえば、例えばPART1でも紹介した巣ごもりやテレワークによる自家調理の増加や電気製品の増加など。ただ、統計上の火災件数としてあらわれてきてはいないため、単なる「偶然」として片付けられかねない。認知の不足を招く可能性もあり、かえって注意を高めたいところだ。
●全火災の月別出火件数(2020 年1月~9月)

半導体工場の火災が連鎖している
このような視点で、企業について言えば、火災リスクが高まっている理由はいくつか考えられる。
ここ数十年、工場・作業所、事務所など、企業全体における火災の発生件数はほとんど変わらない。しかし、業種によっては発生確率が高まっている可能性がある。統計上の数字にはあらわれないが、特定の分野で火災が増えているような現象だ。
例えば、半導体業界では昨年10月に宮崎県延岡市にある旭化成エレクトロニクスの工場で火災が発生、今年3 月19日には茨城県ひたちなか市のルネサスエレクトロニクス那珂工場で火災が起きた。
旭化成エレクトロニクスは火災による既存工場の復旧をあきらめ、その代替生産をルネサスエレクトロニクスに委託。そのルネサスが大規模火災に見舞われるというまさに「偶然」の連鎖となった。
かつ、その直後の3 月31日、今度は台湾でTSMC のFab12B 工場で火災が発生。生産への影響はなかったが、変電所の部品の異常により二酸化炭素消火システムが作動し、その結果、協力会社の従業員がCO2を過剰に吸い込み病院に運ばれる事故が起きた。
また、火災ではないが、4月14日には台南市にあるFab14B P7 工場で大規模な停電が発生。原因は別の建設作業で地下電源ケーブルを誤って破損したこととされている。
さらに4月21日、再びルネサスエレクトロニクス那珂工場で今度は発煙事故が発生。3月の発火場所とは異なり「電気系統のトラブルとみられる」という。
これだけ火災が続けば、短期間とはいえ、発生確率は高まっていると考えるのが妥当だろう。ただし原因が分からないため、一連の事故が単なる偶然なのか、何か「共通のリスク要因」があるのかまでは特定されていない。
https://www.risktaisaku.com/feature/bcp-lreaders
【オピニオン】コロナ火に気を付けろの他の記事
- PART3 激化する山火事/森林火災※「燃料蓄積」状態の森林 乾燥化と土地利用で火災拡大
- PART2 企業の火災リスクが高まっている理由企業は「発生確率」と「影響度」を見直し防火体制を再検討
- PART1 変わる火災リスクの条件「可燃物」「火種」「人の動き」の変化をとらえ注意と対策
- 序章 火災リスクは高まっているのか?
おすすめ記事
-
-
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/03/25
-
-
全社員が「リスクオーナー」リーダーに実践教育
エイブルホールディングス(東京都港区、平田竜史代表取締役社長)は、組織的なリスクマネジメント文化を育むために、土台となる組織風土の構築を進める。全役職員をリスクオーナーに位置づけてリスクマネジメントの自覚を高め、多彩な研修で役職に合致したレベルアップを目指す。
2025/03/18
-
ソリューションを提示しても経営には響かない
企業を取り巻くデジタルリスクはますます多様化。サイバー攻撃や内部からの情報漏えいのような従来型リスクが進展の様相を見せる一方で、生成 AI のような最新テクノロジーの登場や、国際政治の再編による世界的なパワーバランスの変動への対応が求められている。2025 年のデジタルリスク管理における重要ポイントはどこか。ガートナージャパンでセキュリティーとプライバシー領域の調査、分析を担当する礒田優一氏に聞いた。
2025/03/17
-
-
-
なぜ下請法の勧告が急増しているのか?公取委が注視する金型の無料保管と下請代金の減額
2024年度は下請法の勧告件数が17件と、直近10年で最多を昨年に続き更新している。急増しているのが金型の保管に関する勧告だ。大手ポンプメーカーの荏原製作所、自動車メーカーのトヨタや日産の子会社などへの勧告が相次いだ。また、家電量販店のビックカメラは支払代金の不当な減額で、出版ではKADOKAWAが買いたたきで勧告を受けた。なぜ、下請法による勧告が増えているのか。独占禁止法と下請法に詳しい日比谷総合法律事務所の多田敏明弁護士に聞いた。
2025/03/14
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方