(出典:Resilience is Your Competitive Advantage)

筆者はこれまで本連載の中で、BCM の専門家や実務者による非営利団体 BCI(注 1)による調査報告書を多数紹介してきたが(注 2)、今回紹介する報告書『Resilience is Your Competitive Advantage』(以下「本報告書」と略記)は他の調査報告書とは成り立ちが若干異なる。

本報告書そのものは「white paper」としてまとめられており、その記述内容のよりどころとして BCI の各種調査報告書のデータが引用されている。例えば本稿冒頭の図は本報告書の 10 ページ目に掲載されているものだが、記述されている内容は次のとおりであり、これらは過去に BCI から発表された、Workplace Recovery Report(注3)や Emergency Communications Report、(注 4)Supply Chain Resilience Report(注5)などといった調査報告書に掲載されていたものである。

32% の組織は複数の場所に立地している。
55% の組織は緊急事態における通信手段を 3 種類以上用意している。
11% の組織は第三者が所有している場所に移れるようにしている。
26% の組織は在宅勤務を可能にしている。
69% の企業は携帯電話網を通して消費者と直接関わっている。
75% の組織はアンチウィルス・ソフトウェアを導入している。
69% の組織におけるネットワークで監視アプリケーションが導入されている。
57% の組織はサプライチェーンにおけるインシデントから生じる損失に対して損害保険をかけている。

なお、本報告書に対しては SAP Digital Interconnect 社がスポンサーとなっていることもあり、同社が過去に実施した調査の結果も引用されている。

これらのようなデータを引き合いに出しながら、本報告書では「変化への対応(responding to change)」、「より早い対応と復旧の実現(enabling faster response and recovery)」、「注意義務の履行(fulfilling duty of care)」という 3 つの観点を中心に、レジリエンスが組織の競争力の源となることを論じている。さほど長くない文章なので多くの皆様に一読をお勧めしたいと思う。

なお余談だが、レジリエンスに対して「business enabler」という表現が本報告書全体を通して頻出する。「ビジネスを成功に導く鍵となる要因」というような意味で使われていると思われる。筆者にとっては馴染みのない表現であったが読者の皆様にとってはいかがだろうか。このような新しい(しかも今後どこかで使えそうな)表現に出会うことも、海外の文献を読むことの小さな喜びのひとつである。

■ 報告書本文の入手先(PDF 16 ページ/約 1.5 MB)
https://www.thebci.org/event-detail/event-calendar/resilience-is-your-competitive-advantage.html

注1)BCIとは The Business Continuity Institute の略で、BCMの普及啓発を推進している国際的な非営利団体。1994年に設立され、英国を本拠地として、世界100カ国以上に8000名以上の会員を擁する。
http://www.thebci.org/

注2)筆者から提供させていただく情報が BCI に偏りがちなのは、筆者自身が BCI の会員であるための自然な成り行きである。

注3)「事業継続のための代替オフィスなどの活用状況の実態」(BCI Workplace Recovery Report 2016)
http://www.risktaisaku.com/articles/-/4941

注4)「緊急事態下でのコミュニケーションに関する実態調査(2017年版)」(BCI Emergency Communications Report2017)
http://www.risktaisaku.com/articles/-/4475

注5)「9 年間にわたって続けられている BCI のサプライチェーン・レジリエンス調査」(BCI Supply Chain Resilience Report 2017)
http://www.risktaisaku.com/articles/-/4141

(了)