危機管理・BCPのDXはもう走り始めている(写真:写真AC)

考え方が根底から変わる

ホワイトカラーを中心に人とAIの仕事の比率が大きく変わっていく(写真:写真AC)

企業の管理部門(総務、人事、財務、情報システム等)を中心としたホワイトカラーの職種は、この20年~30年でAI(人工知能)にとって代わられると言われています。それどころか研究職以外の医師や薬剤師、弁護士、税理士、会計士などの師士業もAI化の対象になっていて、好むと好まざるとに関わらず、近い将来、世の中の「人」と「AI」の仕事の割合は大きく変わっていくことになります。

危機管理やBCPにおいてもその流れは同じ。10年を待たず、日本でも危機管理/BCPのDX(デジタル・トランフォーメーション)化は確実にやってきます。

私たち危機管理/BCPコンサルは、現時点では、組織の重要性を示して対策本部の設えや運用をクライアント企業単位でアドバイスする立場ですが、このコロナ禍によってその考え方は根底から大きく変わらざるを得ないと感じています。前回までにお話した複合対策本部とウェブ対策本部の運用も含め、危機管理/BCPのDX化を進める必要性が増してきているからです。

コロナ禍で学んだものは、対策本部の構造や運用の変化ばかりでなく、危機管理における「統制」と「全社一丸」の行動という大きな課題です。もちろんこれらは経営全般においても必要な企業文化ですが、有事の危機的状況において、このフレームワークは早期の事業復旧を目指す上で必須と考えられるものです。

では、統制を強化し、全社一丸で物事にあたるために必要なものは何か?

簡単に言えば、危機管理/BCPの絶対的な「司令塔」の存在です。過去、災害対応を成功に導いた事例は、司令塔を抜きに語ることはできません。そして、この司令塔となる人物や組織を“賢く”し、権限を集中することが重要なのはいうまでもないでしょう。「司令塔」がBCPにおける何らかの判断をするために、必要な情報を素早く集め、分析し、方向性を見定め、全社その方向に一丸となることが、有事に早期の事業継続ができるかどうかにつながります。

情報収集・分析をAIがサポート(写真:写真AC)

しかし、突然起こる災害に対応する能力が、予定された「司令塔」に当初から備わっているわけではありません。危機管理/BCPのDX化においては、この情報収集機能と分析機能を、発災直後からAIにサポートしてもらうことになります。

もちろん、いきなりAIが働き始めるわけではなく、次ページのようなマイルストンによって危機管理/BCPのDXが進んでいくのだろうと考えられます。