小池知事は女性向け防災ブック「東京くらし防災」を3月1日から配布すると説明した

東京都は19日、いわゆる「女性版東京防災」こと、女性視点の防災ブック「東京くらし防災」を3月1日から無料配布すると発表した。スーパーや美容院、ネイルサロンなど女性がよく利用する場所に設置する。また女性の防災人材育成についての検討会議の最終報告書も発表。3月3日に港区の東京ミッドタウンで「防災ひな祭り」と題したイベントを開催。女性防災人材育成カリキュラムのキックオフイベントとする。

「東京くらし防災」は2015年発行の「東京防災」と同じサイズのB6版で164ページ。主な内容は(1)事前の備え(2)発災時の行動(3)被災後の生活。事前の備えでは備蓄や家具の固定、外出時や子どもの被災に役立つもの、地域コミュニケーションの重要性などを伝える。発災時の行動は主に身を守るためのものを解説。被災後の生活では避難所での問題について、着替えや授乳、衛生といった女性ならではの問題にフォーカスする。

「東京防災」は全世帯に配布だったが、「東京くらし防災」は特定の場所に設置。都立・区市町村立施設のほか、スーパーや美容院、ネイルサロンなど女性がよく利用する場所や郵便局、交通機関などに置かれる予定。すでにイオングループ、日本郵便、東京メトロなど大手企業のほか、美容院やネイリストの業界団体が配布協力することを決めている。2月1日からさらに協力事業者を募集する。「東京防災」でも行っているダウンロード配布も今後検討する。

「女性の視点からみる防災人材の育成検討会議」の報告書では、避難所や職場でリーダーとなる女性人材の育成に向け、カリキュラムを実施する方針をまとめた。基礎編の「防災ウーマンセミナー」と応用編の「防災コーディネーター育成研修会」を実施。どちらも働く女性向けの「職場編」と専業主婦などを対象にした「地域生活編」に分けて実施する。

基礎編は災害に関する基本的な知識として、発災時の身の安全の確保や避難行動、備蓄や家具固定といった事前の備えなどを学ぶ。応用編では避難所や職場で自分の身を守るだけでなく、課題解決を図れるリーダー的人材育成を進める。防犯や衛生管理など避難所での課題を知り、行動を考える。職場については発災後の一斉帰宅の抑制と会社内に3日間滞在するにあたっての問題解決、帰宅困難者受け入れの際の準備や配慮などを学ぶ。

3月3日に人材育成のキックオフイベントとして「防災ひな祭り」を開催する。若年層へのPRとしてモデル・松島花さんのトークショーや、避難所の狭い場所でも体を動かせる「防災ヨガ」の紹介も実施。「東京くらし防災」を来場者にプレゼントする。人材の育成検討会議での資料によると、カリキュラム基礎編は今年度中の開始が見込まれている。

小池百合子知事は19日の記者会見で「よりきめ細やかな災害対応のため、女性の視点や発想を生かす」と説明。人材については「地域や企業で防災活動の核となって活躍する女性防災人材の育成を進める。女性リーダーがいるかいないかで全く違ってくる」と重要性を強調した。また「災害はいつ何時起こるかわからない。(被災する)地域・場所・時間によって役割や求められるものは違うが、いろいろなケースを想定し、備えられるリーダーを育てていきたい」と意気込みを語った。

導入へ注力する乳児用液体ミルクについては「『東京くらし防災』に掲載する。災害現場のニーズがあるからだ」と説明。現状では食品衛生法に規定がなく、国内で製造や販売ができないことや、少子化が進む中でメーカーが投資を行うことのリスクについては「企業の経済原理に合うようニーズを作る」と述べた。小池知事は国へ規格作りを働きかけるだけでなく、メーカーが参入しやすいよう備蓄などで液体ミルクの需要作りを進めていく方針。

■ニュースリリースはこちら
「女性視点の防災ブック「東京くらし防災」の作成及び協力事業者等の公表・募集について」
http://www.metro.tokyo.jp/tosei/hodohappyo/press/2018/01/19/06.html

「女性の視点からみる防災人材の育成検討会議の最終報告について」
http://www.metro.tokyo.jp/tosei/hodohappyo/press/2018/01/19/08.html

「東京の女性が一歩踏み出す日『防災ひな祭り』の開催について」
http://www.metro.tokyo.jp/tosei/hodohappyo/press/2018/01/19/07.html

■関連記事「東京都、九都県市で液体ミルク導入提案」
http://www.risktaisaku.com/articles/-/4130

(了)

リスク対策.com:斯波 祐介