北海道の北東に延びる千島海溝では、オホーツク海(北米)プレートの下に沈み込んだ太平洋プレートに複数の穴が開いていることが分かった。マントル深部からの熱い上昇流がこの穴を通り、千島火山帯のマグマと混合しているため、過去に巨大な噴火が発生したと考えられるという。
 東北大地震・噴火予知研究観測センターの豊国源知助教や趙大鵬教授らが地震波を網羅的に解析し、日本列島や周辺の地下にあるマントルの構造を高い精度で推定した成果として、12日までに発表した。論文は米地球物理学連合(AGU)の専門誌に掲載された。
 千島火山帯の北端に当たるロシア・カムチャツカ半島南部では、紀元前6440年ごろに巨大噴火があり、火口がクリル湖として残った。豊国助教は「火山の下にプレートの穴が存在し、マントルの熱い上昇流が発達している構造は東南アジアなどでも指摘されており、巨大噴火を説明する新しいメカニズムになり得るのではないか」と説明している。
 地震波は、低温で硬い岩石では速く、高温で軟らかい岩石では遅く伝わる。このため、地震波が伝わる速さを解析するとマントルの構造が分かり、速さの向きによる違いからマントルの流れを可視化できる。
 太平洋プレートは千島海溝と日本海溝、伊豆・小笠原海溝でマントルに沈み込み、スラブと呼ばれる。折れ曲がって一部が割れたり、裂けたりして穴が開くとみられる。伊豆・小笠原海溝では、スラブが下部マントルまで断続的に沈み込んでいることも判明した。 
〔写真説明〕地震波の解析で推定したロシア・カムチャツカ半島付近のマントル構造。沈み込んだ太平洋プレート(スラブ)に穴が開いている(豊国源知・東北大助教提供)

(ニュース提供元:時事通信社)