ワールド ファイアーファイターズ:世界の消防新事情
「ファイアーガールズキャンプ」で女性消防士を増やそう!
女性消防士の具体的採用対策
一般社団法人 日本防災教育訓練センター 代表理事/
一般社団法人 日本国際動物救命救急協会 代表理事
サニー カミヤ
サニー カミヤ
元福岡市消防局レスキュー隊小隊長。元国際緊急援助隊。元ニューヨーク州救急隊員。台風下の博多湾で起きた韓国籍貨物船事故で4名を救助し、内閣総理大臣表彰受賞。人命救助者数は1500名を超える。世田谷区防災士会理事。G4S 警備保障会社 セキュリティーコンサルタント、FCR株式会社 鉄道の人的災害対応顧問、株式会社レスキュープラス 上級災害対策指導官。防災コンサルタント、セミナー、講演会など日本全国で活躍中。特定非営利活動法人ジャパンハート国際緊急救援事業顧問、特定非営利活動法人ピースウィンズ合同レスキューチームアドバイザー。
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世界的に見ても女性消防吏員の比率は高くて平均5%であるが、日本全国の消防吏員に占める女性の平均的な割合は、2016年4月1日現在で2.5%。
米国、オーストラリア、イギリス、ドイツなどでも女性消防吏員の比率が5%に達する消防局は少なく、日々、斬新的な取り組みを行っている。
なかでも、多面的な要素を含んだ米国ロスアンゼルス郡消防局が行っている「ファイアーガールズキャンプ」は消防施設、トレーニング機材やホースなどの装備を使った、消防士になるための試験を目指す女性達への訓練機会として、消防署の一部を開放し、次世代の女性消防士を育てるためのカリキュラムが組まれており、今、世界の消防から注目されている。
Aspiring women firefighters feel the burn (出典:Youtube)
■ロスアンゼルス郡消防局のファイアーガールズキャンプ
https://www.fire.lacounty.gov/girls-fire-camp-september-2017/
多面的な要素とは下記の通り。
・14才から19才まで無料で参加できる。(受験資格は18才以上)
・毎週土曜日(6週連続)の午前中に行っているため、都合を付けやすい。
・ファイアーガールズキャンプコースの募集人員は40名程度。
・参加者は米国国籍を有し、高校を卒業していることなどの受験資格、採用条件を満たしていること。
・各自スポーツ保険に加入することが条件。
・ケガや事故などについて、署へ訴訟や責任を求めないという免責同意書へのサインが参加条件となっている。
・ダイエットや健康維持にもつながる。
・採用試験でパスしなければならない体力測定項目を重点的にトレーニングする。
・グループトレーニングの後に各個人に応じた具体的な日々のトレーニングメニューが組まれている。
・達成目標までの自己育成計画や指導員による体力評価も行われている。
・自分だけでは続けられない女性でも、一緒に女性消防士を目指す同性の友人ができることで気持ち的に頑張る気持ちが高まる。
・女性消防団への育成にも繋がっている。
・女性消防士が指導者となって教えている。
・メンタル面をフィジカルフィットネスを通じて養い、チームワーク意識の大切さを育てる。
・14才から19才までの女性に対して、基本的な消防の知識や法律、個人装備の着脱方法、空気呼吸器や消防装備の使い方、排煙器具や破壊器具の操作要領、各種消火戦術、各種救助法、救急法などを6回の連続した土曜日の午前8時から午後1時まで、実践的に教えている。
・消防士になる前に消防団員としても地域にて活躍できる。
・採用試験の体力測定が行われる施設を使うことでより具体的な試験対策を行うことができる。
・採用時にはいつでも現場に行ける状態まで育っている。
・消防学校入校時、男性消防士と同じ訓練メニューを難なくこなすことができる。
など、メリットは高い。
このプログラムができた経緯は、18才で消防吏員の受験資格を得られるまでに、一般女性が消防吏員試験時の体力検定をパスするのは非常に困難なことが明確になったこと。
今まで女性消防士を増やすために、すでに活躍してきた女性消防士の方々の経験談やセミナーや一日体験など、さまざまな消防広報を行ってきた。しかし大きな問題は、せっかく興味を持ってもらっても、どんな採用試験内容で、特に体力検定の最低基準は何を何回達成する必要があるのか?などが不明確なことだった。採用試験の受験者を増やしたとしても、筆記試験で通っても体力試験で落ちてしまう女性達が多いことに気づいた。
また普通のフィットネスジムでは、採用試験時に行われる「ホースを担いでのダッシュ」や「階段上り」など、試験時に使われる施設がなく、その消防本部が最低基準とする体力検定の種目を練習できないため、試験前に計画準備にすることができなかった。
Meet the next generation of female firefighters (出典:Youtube)
米国の多くの消防本部における女性消防士雇用の考え方は以下の通り。
・消防士として地域を守る人材に性別は関係ない。
・各消防業務を行える実力と能力があれば性別は問題ない。
・強い意志や意欲、適性を組織が認め、託している。
・女性が消防業務を行えないという明確な理由がない。各消防業務をできるか否かは性別では判断できない、また、いつまで経っても育たない。
・女性消防士の不祥事発生率はゼロ。
・女性や子供などの被災者にとっては男性消防士や救急隊員よりも女性消防士による対応を求められることも多い。
・社会が女性消防士の活躍を求めている。
などが挙げられる。世界の女性消防士の活躍している映像は、Youtubeを探せばたくさん見つけることができる。
■世界の女性消防士の活躍映像
https://www.youtube.com/results?search_query=FEMALE+FIREFIGHTER%E3%80%802017
ロスアンゼルス郡消防本部は、現時点で3000名の消防職員のうち、女性消防士は40名。これからさらに女性消防士を増やすために長期継続計画で、このファイアーガールズキャンプを続けていくそうだ。何よりも本気度を高め、モチベーションを上げる教え方、カリキュラム内容などは非常に参考になる。
いかがでしたか?
日本においても、消防における女性消防吏員の活躍に向けた取組の推進については、各消防局で様々な取り組みが行われています。しかし、もっと「ファイアーガールズキャンプ」のような直接的な試験対策や消防に特化したカリキュラムの受講を実践するのはいかがだろうか。メディアや社会への話題性も高まり、多くの若い女性に興味を抱いていただくなど、女性消防職員を増やす機会の一つのアイデアになると思う。
また、女子高校や女子大学などで「ファイアーガールズ」のサークルを作ることができれば、サークル活動を通じて、具体的に消防受験を目指したり、地域の消防団員として活躍したり、本気で防災力のアップに繋がると感じます。
■消防における女性消防吏員の活躍推進
http://www.fdma.go.jp/html/hakusho/h28/h28/pdf/special4.pdf
■女性消防吏員の活躍推進に向けての経緯
http://www.fdma.go.jp/info/2016/20160104-2_01.pdf
http://www.fdma.go.jp/info/2016/20160104-2_02.pdf
http://www.fdma.go.jp/info/2016/20160104-2_03.pdf
http://www.fdma.go.jp/info/2016/20160104-2_04.pdf
http://www.fdma.go.jp/info/2016/20160104-2_05.pdf
http://www.fdma.go.jp/info/2016/20160104-2_06.pdf
各自治体で募集されている海外派遣研修で論文を書いて、ロスアンゼルス郡消防局「ファイアーガールズ」への体験取材や、「消防における女性消防吏員の活躍に向けた取組の推進について」の米国現地取材などをお考えの女性消防吏員の方は下記連絡先までご連絡下さい。
海外研修サポート(現地通訳と出動搭乗体験など)を条件に論文作成のお手伝いをさせていただきます。
また、女性消防士採用に向けての海外の事例に基づく、具体的な対策についてのセミナーや講演を行っています。ご興味のある方はご連絡下さい。
それでは、また。
(了)
一般社団法人 日本防災教育訓練センター
http://irescue.jp
info@irescue.jp
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