今回紹介するのは、マサチューセッツ大学ダートマス校の研究者3人による論文である。タイトルにあるように、本論文では中小企業のレジリエンスと競争力(competitiveness)に、どのような因子が影響を及ぼしているかが論じられている。
本論文の構成は大きく2つに分かれており、前半部分では他の研究者による多くの論文に基づいて、中小企業のレジリエンスと競争力に影響を及ぼすと考えられる因子を抽出した上で、後半部分ではこれを検証するために実施したアンケート調査の結果が示されている。タイトルに「empirical research」(実証的研究)と書かれているのはそのためである。
まず著者らは多数の論文の中から、中小企業のレジリエンスと競争力に関係すると思われる次の8つの因子を見いだした。
・Organisational behaviour(組織の行動様式)
・Managerial characteristics(経営の特性)
・Use of technology(テクノロジーの利用)
・Generation of capital(資本の生成)
・Globalisation(グローバル化)
・Supply chain integration and flexibility(サプライチェーンの統合と柔軟性)
・Location and marketing(場所とマーケティング)
・Quality(品質)
さらにこれらを「Internal factors」(内的因子)、「External factors」(外的因子)、「Enabling factors」(実現因子)の3つに整理して、図1のようなフレームワーク案として提示している。
本論文では前述の8つの因子それぞれに対して、他の研究者から過去に発表されたさまざまな論文を紹介しながら、中小企業がどのような特性をアドバンテージとして生かしているか、どのような問題に直面しているか、などが示されている。
例えば「Organisational behaviour」(組織の行動様式)とは、会社における意思決定の仕組みや組織構成に関するものだが、本論文では他の4つの論文で指摘されていることを参照しながら、中小企業における意思決定が中央集権的となっていることが多いことや、部門間の関係や相互作用が大企業に比べて個人的なものになりがちであることが示されている。
また「Globalisation」(グローバル化)については、中小企業にとってチャンスである反面、外国の大手企業との競争にさらされるなど、メリットとデメリットの両面があることが指摘されている。また、重要なクライアントからの要求を断れずに海外進出をせざるを得なくなる状況や、グローバル企業からの大規模な受注に迅速に対応できずに取引機会を失ってしまうような状況に直面することなどが指摘されている。
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