動物から人へのSFTSウイルス感染

これまで猫120頭、犬7頭、チーター2頭でのSFTSの国内発生が確認されています。猫や犬がSFTSウイルスに感染して発病した場合、人で認められるSFTSに特徴的な症状に類似した症状を示します。

SFTSに罹患している猫や犬に咬まれるか、直接触れることにより、SFTSウイルスに感染して発病した人の事例が確認されています。近年、発病した動物から飼い主などへの感染が大きな問題になりつつあります。罹患事例の一部を以下に紹介します。

野良猫に咬まれて感染

野良猫に咬まれて感染した事例(写真:写真AC)

猫からSFTSウイルスの感染を受けた罹患例です。患者は山口県に居住する健康な女性で、2013年6月に、発熱、食欲低下、おう吐などの臨床症状が認められ、医療機関を受診しました。

検査の結果、末梢血液検査では白血球減少と血小板減少が認められました。患者は、その後症状が悪化し死亡しています。病理解剖の所見でSFTSが疑われたため、詳細な検査が実施された結果、SFTS罹患が死因であったと診断されています。

この患者への問診から、餌付けをしていた野良猫に咬まれ、その2日後に発病したことが分かっています。その猫もSFTSを疑わせる臨床症状をすでに示していたことも分かっています。この患者は、猫からSFTSウイルスの感染を受けたと推定されました。

飼育犬の唾液などから感染

飼育犬の体液から感染した事例(写真:写真AC)

次に、犬からSFTSウイルス感染を受けたと考えられる罹患例を紹介します。2017年6月、徳島県で飼育されていた犬が元気を消失し、食欲も低下し、消化器症状(軟便及び血液便)を示したために、飼い主は飼育犬を動物病院で受診させています。最終的には、その犬の血液からSFTSウイルスが検出され、SFTS罹患と診断されています。罹患犬は回復しています。

犬が発病してから10日目に、飼い主の男性が発熱し、おう吐、下痢、関節痛、頭痛などの臨床症状が出たために医療機関を受診しました。最初、飼い主はSFTS罹患を疑われていなかったのですが、治療の間に、飼い主より先に、犬が飼い主と同じ食欲不振や消化器症状などを呈していたことが分かりました。

そこでSFTSウイルス感染が疑われ、飼い主から採血して血液検査を行ったところ、SFTSウイルスの抗体が確認されたのです。しかし血液検査を行った時期はすでにSFTSウイルス感染極期を過ぎていたため、ウイルス分離は成功していません。幸い飼い主も回復しました。

飼い主にマダニの咬傷痕はなく、発病した飼育犬に咬まれたことはないということです。しかし、飼育犬が体調不良の間、犬の体をさすったり、餌を素手で与えたりしていたようです。

飼育犬の世話の後に、男性は手洗いを十分行っていないことも分かっています。厚生労働省結核感染症課からは「男性は、唾液をはじめとする飼育犬の体液から感染した可能性が高い」というコメントが出されています。

動物園が感染の場になる恐れも

動物園が感染の場になる恐れも(写真:写真AC)

2017年7月には、動物園でSFTSウイルス感染によりチーター2頭が死亡する事例が発生しています。動物園には多くの老若男女が訪れます。また、多種類のSFTSウイルスに感受性を持つ可能性のある動物が飼育されています。

動物園がSFTSウイルスの増殖及び他の動物や人への感染の場になる可能性は否定できません。動物園におけるSFTS防疫対策の確立も重要な課題であると思われます。

SFTSウイルスに感染しても症状を示さない不顕性感染を起こしている動物が、人へのSFTSウイルスの感染源になる可能性についてはよく分かっていません。これまで動物から人へ感染した事例は、すべてSFTSの臨床症状を示していた動物からウイルスの感染を受けています。

予防をどうするか

SFTSワクチンは開発されていません。医療機関においては、SFTSウイルスが人から人へ接触感染する恐れのあることを認識の上、院内感染防止に努めることが重要です。