2020/08/04
2020年8月号 豪雨対応
コロナと共存する「転禍為福のBCP」とは?
地産地消への道

長期的な対策の選択肢、グローバルの中長期的な戦略を考える上で、「グローバルポートフォリオ・マネジメント」という製造業や金融の世界で使われる言葉がある。ポイントのひとつは地産地消。使われる場所や市場の近くで部品を集め、人を集め、設計を含めてやっていくようなサイクル。
グローバルサプライチェーンをフル回転させる国際・業際ロジスティクスは、明かに限界がきている。ローカライゼーションよりもう少し広い「リージョナライゼーション」の考え方で、一国に集中するよりも少し近隣の諸国にバランスをとりながら分散していく。市場も一国に閉じずに近隣諸国を含めて考える。
一方で、効率性を追い求めていると、特定の国や地政学的要因、顧客、産業、技術、製品、都市に集中していく。そこに上限を設定し、上限を越した瞬間に停止、市場転換、または撤退する。つまり、停止・転換・撤退のしきい値やタイミングを事前に客観的に決めておくことがポイントになる。

では、サプライチェーンを組み換える際にどんな発想をすべきか。データセンターの場合によく使うのが「3 拠点相互バックアップ」。相互運用性を確保しようということで、同じ災害で同時被災しないような形で分散していく。ある程度は人の移動ができるようにし、平常時にもそれぞれの拠点が別の拠点の仕事もやる。普段から三つ巴で少しずつシェアをしていくことが重要だ。
また、バックアップに関しては、中堅・中小企業の場合、自社ではできないことがある。しかし、最近では、空き工場や空き機械をシェアするサービスも出てきている。同業他社や異業種で普段からやり取りし、技術が標準化されていれば、社内にこだわらずにバックアップできるのではないかと思う。
2020年8月号 豪雨対応の他の記事
- 【風水害の被災経験を生かす】西日本豪雨を乗り越えた珠玉の日本酒
- 【令和元年東日本台風から1年】予期せぬ堤防決壊 「地の利」を味方に迅速対応
- 日本企業のリスクマネジメントは機能したか?
- きのこの「ホクト」、獺祭の「旭酒造」の、まさかの被災経験
- コロナと共存する「転禍為福のBCP」とは?変化を見逃さず柔軟に危機対応、転換も恐れず
おすすめ記事
-
大阪・関西万博 多難なスタート会場外のリスクにも注視
4月13日、大阪・関西万博が開幕した。約14万1000人が訪れた初日は、通信障害により入場チケットであるQRコード表示に手間取り、入場のために長蛇の列が続いた。インドなど5カ国のパビリオンは工事の遅れで未完成のまま。雨にも見舞われる、多難なスタートとなった。東京オリンピックに続くこの大規模イベントは、開催期間が半年間にもおよぶ。大阪・関西万博のリスクについて、テロ対策や危機管理が専門の板橋功氏に聞いた。
2025/04/15
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/04/15
-
BCMSで社会的供給責任を果たせる体制づくり能登半島地震を機に見直し図り新規訓練を導入
日本精工(東京都品川区、市井明俊代表執行役社長・CEO)は、2024年元日に発生した能登半島地震で、直接的な被害を受けたわけではない。しかし、増加した製品ニーズに応え、社会的供給責任を果たした。また、被害がなくとも明らかになった課題を直視し、対策を進めている。
2025/04/15
-
-
生コン・アスファルト工場の早期再稼働を支援
能登半島地震では、初動や支援における道路の重要性が再認識されました。寸断箇所の啓開にあたる建設業者の尽力はもちろんですが、その後の応急復旧には補修資材が欠かせません。大手プラントメーカーの日工は2025年度、取引先の生コン・アスファルト工場が資材供給を継続するための支援強化に乗り出します。
2025/04/14
-
新任担当者でもすぐに対応できる「アクション・カード」の作り方
4月は人事異動が多く、新たにBCPや防災を担当する人が増える時期である。いざというときの初動を、新任担当者であっても、少しでも早く、そして正確に進められるようにするために、有効なツールとして注目されているのが「アクション・カード」だ。アクション・カードは、災害や緊急事態が発生した際に「誰が・何を・どの順番で行うか」を一覧化した小さなカード形式のツールで、近年では医療機関や行政、企業など幅広い組織で採用されている。
2025/04/12
-
-
-
防災教育を劇的に変える5つのポイント教え方には法則がある!
緊急時に的確な判断と行動を可能にするため、不可欠なのが教育と研修だ。リスクマネジメントやBCMに関連する基本的な知識やスキル習得のために、一般的な授業形式からグループ討議、シミュレーション訓練など多種多様な方法が導入されている。しかし、本当に効果的な「学び」はどのように組み立てるべきなのか。教育工学を専門とする東北学院大学教授の稲垣忠氏に聞いた。
2025/04/10
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方