関西大学社会安全学部教授 亀井克之 氏 

多発する自然災害や、事故、不祥事など、企業を取り巻くリスクは複雑かつ多岐にわたる。こうしたさまざまなリスクを想定し、BCP やリスクマネジメント活動に取り組んできた企業は少なくない。しかし、新型コロナウイルス感染症は、またも多くの組織に「想定外」をもたらした。そのリスクは現在進行中でこの先も不透明だ。企業は未曾有の脅威にいかに対処していけばいいのか。リスクマネジメントの専門家である関西大学社会安全学部教授の亀井克之氏に聞いた。

新型コロナウイルス感染症に対して、企業は、とても頑張っていると思います。しかし、運命的にどうしようもない業界があるのも確か。それは観光や旅行業界です。これは国として政策的に助けないといけない。例えば、倒産した企業の人材を他で受け入れるとか、集中的に財政支援を行うことが必要な段階でしょう。

これまで国は、海外から人を呼び入れるインバウンド施策に力を入れ、訪日観光客はここ数年飛躍的に増えてきました。さらに今年開かれるはずだった東京2020大会に向けた期待も高まり、積極的に投資してきた企業も少なくありません。それが突然、今回のコロナでゼロになったわけですから、とても厳しい状況であることが推測されます。

観光業の中には、老舗旅館や地域社会に根差してきた伝統企業もある。こうした企業を守ることは、日本の文化そのものを守ることですから、日本社会全体のリスクマネジメント、いわばソーシャルリスクマネジメントの取り組みが重要になります。

多くの企業は自助として在宅に切り替えたり、対面サービスをなるべく避けるなどの努力を続けています。さまざまな工夫がなされ、テレワークやWeb会議などへの切り替えが一気に進みました。しかし、自助だけでコロナに立ち向かうには限界があるということです。観光・旅行業だけでなく、飲食やエンターテインメントなどもそうですが、業界全体として助け合う共助と、国や自治体からの支援という公助が必要です。