これまでに発生した多くの災害を振り返ってみると、実際にBCPが策定されていても、それが十分に活用できたケースばかりではありません。それは、当該BCPが実際に使えるものであるかどうかの検証が不十分であったことが理由であると考えられます。ここでは、策定したBCPの実効性を向上させるために行う訓練について考えます。 

防災活動の次に考えること その5 BCPの訓練①

1. 訓練の目的

訓練の目的をまとめると次のようになります。

(1) 災害時に自社が受ける被害のイメージを明確にする
災害発生時には、企業はもちろん被害に見舞われますが、電気・ガス・水道のライフライン、通信や交通など企業を取り巻く状況も悪化します。また、行政や非被災地域からの支援が必ずしも要請通りに得られるとは限りません。

策定したBCPで対応が可能であるかを確認するためにも、まず自社の被害イメージを明らかにして、それを全員で共有します。

(2)BCPの足りない点を見つけて修正する
リスクマネジメントでは、実際に策定した計画(PLAN)を実行(DO)し、それを評価(CHECK)することで、さらに改善(ACT)する「PDCAサイクル」という考え方があります(図1)。

訓練は、この「PDCAサイクル」の「実行(DO)」に該当します。実際に訓練を実施すると、手順通りに進まないことや足りない資器材が出てくるなど、BCPの不備や欠けている点、つまり落とし穴が明らかになります。そこで、実施した訓練の結果を踏まえて計画を見直し、それに基づいて修正することが重要です。

もし、この「実行(DO)」の手順が訓練という形で行われない場合は、実際の災害で自社BCPの実効性を確認する形になりますから、定期的に訓練を実施することが求められます。

(3)計画への理解を深め、災害対応能力を高める
BCPは、それを策定したメンバーだけではなく、全ての従業員がその内容を理解し、災害時には計画通り動けることが重要です。

従業員が訓練を繰り返すことによってBCPの内容が身に付き、また実際に体を動かすことで、その災害対応能力を高めることができます。