新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によってもたらされる新たな日常「ニューノーマル」へ向けた働き方のシフトが加速してる。こうした動きに対し、企業は今後、どのように危機管理やBCPを見直していけばいいのか。リスク対策.comでは6月2日、「コロナ後のニューノーマルにおけるBCP」をテーマにウェビナーを開催し、株式会社東京商工リサーチ 情報本部情報部 部長 松永伸也氏が講演した。東京商工リサーチ 情報本部情報部部長の松永伸也氏が講演した。2回に分けて、本ウェビナーの講演内容を紹介する。

 

②リーマン・ショックや3.11から見たコロナの日本企業への影響

株式会社東京商工リサーチ 情報本部情報部 部長 松永伸也氏

 

 

 

 

 

東京商工リサーチの倒産集計において、倒産とは「法的倒産」と「私的倒産」の2つに大別され、「法的倒産」では再建型の「会社更生法」と「民事再生法」、清算型の「破産」と「特別清算」に4分類される。「私的倒産」は、「銀行取引停止」と「内整理」に分けられる。従って、事業停止や夜逃げ等、いずれにも該当しない場合は「倒産」の対象外となる。

過去の企業倒産の推移をみると、最も倒産が多かったのは1984年で2万841件。2万件を越えたのは最初で最後だ。日米貿易摩擦の激化と円高、産業構造の変化という大変慌ただしい時期でもあり倒産が多発した。一方、負債総額のピークは2000年で23兆8000億円。資産運用環境の悪化(逆ザヤによる経営悪化)などで、生命保険会社数社が破綻し負債を押し上げた。

その後、日本の企業はリーマン・ショックと東日本大震災を経験することになる。2008年9月にリーマン・ショックが発生し、約1万6000件の企業が倒産した。このため、政府は中小企業の資金繰り支援策として時限立法で「中小企業金融円滑化法」を施行した。同法は、借り手の中小企業から条件変更等の申し出があった場合、貸し手である金融機関はできる限り応じるように努力義務を定めたものだ。この効果もあって、倒産は右肩下がりで推移した。

ただし、11年目を迎えた2019年、倒産件数はリーマン・ショック後初めて前年を上回った。中小企業金融円滑化法といったカンフル剤の効果が剥落し、いわゆる“息切れ倒産”が増加した格好だ。ちなみにリーマン・ショック時、企業数は全国で421万社(2009年)あったが、今では359万社(2016件)まで減少している。減少率はマイナス14.7%。それに対して2019年の倒産件数は、(リーマン・ショック時と比較し)マイナス48%と、倒産の減少幅が圧倒的に大きい。それほど国の施策によって倒産が抑えられてきた。中小企業金融円滑化法という公に認められたリスケが大変効果を奏したのではないかと思っている。