写真を拡大 (出典:Bitglass / 2020 Remorte Workforce Report)

ITセキュリティープロバイダーのBitglass社は、米国のITおよびサイバーセキュリティーの実務者413人を対象として、新型コロナウイルスの影響で普及が進んだリモートワーク(在宅勤務を含む)(注1)に関するアンケート調査を、2020年5月にオンラインで実施し、その結果を同年6月に発表した。

本稿のトップに掲載した図は、従業員の中でリモートワークを実施している人の割合を、昨年(図の左側)と現在(右側)について尋ねた結果である。昨年に関しては1〜25%が63%で最も多いのに対して、現在については76〜100%という回答が75%に達しており、米国においてもリモートワークの導入が急激に進んだ様子がよく分かる。内閣府の調査(注2)によると、日本ではリモートワークの実施率が3割程度とのことであり、これと比べると普及率がかなり高いようである。

本調査における回答者のの業種別内訳を見ると、専門的サービス(注3)、IT、政府機関、金融、教育・研究などが大きな割合を占めている。筆者はこのデータを見た時に、製造業のようにリモートワークが困難な業務が多い業種からの回答が少ないために、リモートワークを実施した割合が高めに出たのではないかと思ったが、内閣府の調査結果(同じく注2)を見ると業種間で極端な違いはなく、最も実施が進んでいる業種でも50%程度であった。したがってこれは業種の違いによる影響というよりは、日米間でリモートワークの普及度合いが大きく異なっていることの現れと考えてよいであろう(注4)。

また、リモートワークの普及に伴って懸念される問題の一つは、生産性の低下ではないかと思うが、この点についても本報告書ではデータが示されている。図1はリモートワークによって生産性が高まったかどうかを尋ねた結果であるが、回答者の38%が、自分の組織において生産性が高まったと認識している。

写真を拡大 図1.「あなたの組織ではリモートワークによって、生産性が高まったか、もしくは何らかの利益がありましたか」という設問に対する回答結果(出典:Bitglass / 2020 Remorte Workforce Report)

この点についても日本企業の状況とはかなり異なる。前述の内閣府の調査結果(同じく注2)によると、生産性が減少したと認識している人が半数程度を占めており、生産性が増加したと認識している人は少ない(注5)。

Bitglass社の調査報告書においては、生産性が高まった理由に関する記述はないが、回答者の44%はパンデミック収束後もリモートワークをぜひ継続したい、40%が継続する可能性があると回答しているので、米国ではパンデミック収束後も多くの企業でリモートワークが定着する可能性が高いであろう。一方で日本企業に関しては、内閣府の調査結果を見る限りでは、元の業務形態に戻す方向が主流となるかもしれない。