企業のBCPを確実に守るデータセンター

都心から電車で40分ほどの東京都多摩市に野村総合研究所が昨年11月に竣工させた最新鋭のデータセンター「東京第一データセンター」が稼働している。多摩地域という内陸部の立地性、横揺れ対策の免震装置に加えて縦揺れ対策の制振装置を設置、停電対策が万全であるのはもちろんのこと、著しいコンピュータの性能向上にも対応した独自の建築方式と空調システムも導入している。

海から離れた多摩の丘陵地に立地 
東京第一データセンターは、野村総研として5つ目のデータセンターとなる。同社は1990年以来、データセンター事業で25年余の実績があるが、そんなデータセンターのベテランが、新施設の建設で一番主眼に置いたのが“耐災害性”という。想定災害は、第三者の専門評価機関に依頼して危険要因を分析確認。震災対策をはじめ、土砂災害、地盤災害、噴火による火山灰に対する災害想定まで確認しているという。 

こだわりの第一は立地。用地選定には、東日本大震災前から2年以上の歳月を費やし数百の候補地の中から厳選して決めた。データセンターは倉庫業者が手掛けたものも多く、従来は沿岸部の立地が多く見られたが、事業継続性が強く求められるデータセンターには、東日

本大震災以降、内陸部の立地が見直されている。同地は、東京湾から直線距離で40㎞近くあることや、丘陵地にあることから、津波や洪水といった浸水被害や沿岸部一帯が抱えている液状化の心配が無い。加えて首都直下地震の震源域からも一定の距離があることや地盤の安定性についても配慮した。 



データセンターの顧客には、国内に加えて外資の金融機関も多く、海外から年間5~10回程度、データセンターに訪れるクライアントも少なくないという。このため、都心から30㎞圏内というアクセスにもこだわった。 

被災時の交通面についても考慮した。京王線と小田急線が通るほか、幹線道路も複数、近くを走っている。 

直下型地震の縦揺れに回転式制振装置 
耐震対策に対しても余念が無い。地盤は専門機関に依頼して強固な地盤であることを確認。建物の躯体性能は建築基準法で定める1.25倍の仕様で、震度6強から7の揺れに対応しているという。

地震対策で見落とされがちなのが縦揺れへの対策だ。一般的な免震装置では、強い縦揺れを軽減できないことが指摘されている。同社のデータセンターは、横揺れに対しては免震装置、直下型地震で懸念される縦揺れに対しては制振装置を設けた。各コンピュータフロアーの各下層階の柱には、縦揺れを回転エネルギーに変動させて振動を吸収する最新装置「縦揺れ制振ダンバー」を設置した(写真)。 

これにより縦揺れを20~40%程度軽減、免震装置では横揺れを3分の1程度に抑えることができるとしている。建物の安全性評価度であるPML値は5%以下。建物は最高水準度の仕様で設計されている。