2017 年上半期に発生した自然災害の概観
Aon Benfield / Global Catastrophe Recap: First Half of 2017
合同会社 Office SRC/
代表
田代 邦幸
田代 邦幸
自動車メーカー、半導体製造装置メーカー勤務を経て、2005年より複数のコンサルティングファームにて、事業継続マネジメント(BCM)や災害対策などに関するコンサルティングに従事した後、独立して2020年に合同会社Office SRCを設立。引き続き同分野のコンサルティングに従事する傍ら、The Business Continuity Institute(BCI)日本支部事務局としての活動などを通して、BCMの普及啓発にも積極的に取り組んでいる。一般社団法人レジリエンス協会 組織レジリエンス研究会座長。BCI Approved Instructor。JQA 認定 ISO/IEC27001 審査員。著書『困難な時代でも企業を存続させる!! 「事業継続マネジメント」実践ガイド』(セルバ出版)
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かつて紙媒体の『リスク対策.com』での連載記事で、世界最大級の再保険ブローカーである Aon Benfield 社が発表した報告書『2015 Annual Global Climate and Catastrophe Report』を紹介させていただいた(注 1)。
これは 2015 年の一年間に世界で発生した自然災害を、主に人的被害と経済損失、および保険金支払額を中心にまとめたものだが、同社はこのようなデータを常時収集しており、世界各国で発生した自然災害のデータをまとめた報告書を毎月作成し、さらに毎年 7 月には、上半期を総括した報告書を作成している(注 2)。
そこで今回は、2017 年 7 月に発表された直近の上半期報告書である「Global Catastrophe Recap: First Half of 2017」(以下「本報告書」と略記)を紹介する。
まず図 1 は、2000 年以降の上半期に発生した自然災害による経済損失と保険金支払額との推移である。東日本大震災やタイでの大規模な洪水が発生した 2011 年の数字が極端に大きいため、平均値と中央値が大きく異なり、2017 年の上半期における損失額は、平均値よりは低いが中央値よりはやや高い数字となっている。
なお人的被害については図では示されていないが、2017 年上半期に発生した自然災害による死者数は 2782 人で、これは 1986 年以来最少との事である。この中で洪水による死者が最も多く、少なくとも 1806 人が洪水による死者とされている。
2017 年上半期における経済損失は約 530 億米ドルとなっているが、このうち半分近くを占める約 260 億米ドルが、「severe convective storm」によって発生しているという。convective storm とは、雷雨や豪雨、霰(あられ)や雹(ひょう)、竜巻などといった、対流(convection)によって発生する気象現象の総称である(注 3)。なお、convection storm による経済被害の大部分にあたる約 230 億米ドルは、米国で発生した複数の気象災害によるものとの事である。
表 1 は上半期に発生した災害の中で、経済被害が数十億ドル規模になったもののリストである。なお 1 位は中国の中南部で発生した大規模洪水、4 位に入っているのはオーストラリアでのサイクロン「デビー」による被害であるが、全体的に米国における異常気象が多いのが目立つ。
また表 2 は、保険金支払額が 10 億米ドル以上になった災害のリストであり、6 件中 5 件が米国となっている。本報告書によると、保険金支払額が 5 億米ドル以上となった災害は上半期中に少なくとも 14 件あり、そのうちの 13 件は米国で発生した異常気象や洪水などの災害との事である。米国において損害保険の活用が進んでいることがよく分かる。逆に、米国以外の地域で損害保険を普及させることが、自然災害による経済被害の軽減に大いに寄与すると考えられるのではないだろうか。
本報告書は半期の総括となっているので、個別の災害に関する情報はほとんど含まれていないが、毎月作成されている報告書では、経済被害などのデータに加えて個々の災害の概要が文章でまとめられている。日本であまり大きく報道されないような災害も含めて、全世界の自然災害の発生状況を俯瞰できる内容になっているので、自然災害による世界各国での被害を網羅的に知りたい人にとっては、貴重な情報源になるのではないかと思う。
■ 報告書本文の入手先(PDF 11 ページ/約 0.6 MB)
http://thoughtleadership.aonbenfield.com/Documents/201707-if-1h-global-recap.pdf
注 1) 『リスク対策.com』vol. 56(2016 年 7 月発行)「レジリエンスに関する世界の調査研究」連載第 13 回「2015 年に発生した自然災害の概観」。
注 2) これまでに作成された毎月の報告書は次の URL から無償でダウンロードできる:
http://thoughtleadership.aonbenfield.com/pages/Home.aspx?ReportCategory=Impact%20Forecasting
注 3) 「convective storm」の説明についてはイリノイ大学気象科学科の Web サイトを参考にした。
https://www.atmos.illinois.edu/cms/One.aspx?portalId=127458&pageId=209972
(了)
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