実践したことで明確になった課題

机上で計画していたことは、実践になると臨機応変に対応すべきことも多く出てきます。「すべてを計画通りにすることはできないけれど、事前に改善できることはしておきたい」と、今坂さんは台風19号を振り返ります。要点を下記にまとめました。

今坂さんによる台風19号の振り返り

・受付で名簿に記入してもらう際、自分の住んでいる場所がどこの町会に属しているのかがわからないワンルームマンションの住民が多くいた。賃貸住まいの方は入れ替わりが激しいので、町会にはそのマンションの不動産管理会社の方に一括で入ってもらっている。そのため住民は町会に属しているかもわからない状態

・『雨が止んでも上流で決壊が起きると、この地域も危ないので、すぐには避難所を出ないでください』とお知らせしたが、雨が止むと夜中でも帰ってしまう人たちが9割以上。危機感を共有できていないと実感

・お客さん気分の避難者もいた。避難所は自分たちで運営するということを日頃から伝えないといけない

・一番の課題は、ひとり暮らしの高齢者の方への対応。日頃からの知り合いで把握している人には声をかけられたが、把握できていない人もいるかもしれない。その方はどうやって逃げるのかを、あらためて考えたい

今坂さんはこれらの課題を、メモを読むかのようにスラスラと話されました。

私の日課は散歩調査

今坂さんの散歩はただ歩くだけではなく、自身が住む地域の調査を兼ねています。新しいマンションができれば不動産管理会社に声をかけ、町会の一員になってもらいます。また避難所までの距離を、いろいろな立場の人の歩く速さを想定し、どのくらいの時間がかかるのかを考えながら散歩をしているそうです。調査内容は、そのつどコミュニティ・タイムラインに書き足されます。

 

「まだまだ課題は山積み。地域の人たちと一緒に解決していきたいと思っています。婦人部、老人会、子ども会、それぞれに声をかけてそれぞれの立場で想像して話し合う機会をつくり始めています。一人一人が主体的に考えないと災害は乗り越えられませんね」

表彰式の様子

今坂さんをはじめとする前向きな長門町会の活動は、第16回地域の防火防災功労賞最優秀賞(東京消防庁消防総監賞)、第24回防災まちづくり大賞消防庁長官賞を受賞されました。

今後、足立区やお隣の葛飾区でも、今坂さん方がコミュニティ・タイムラインのつくり方を広めてくださるそうです。「地域のために」という信用金庫勤務時代から根付いた考え方を原動力に、今坂さんの挑戦は続きます。