東京都は6月の都議会で「東京都無電柱化推進条例案」を提出する。成立後は一定の周知期間後に施行されることとなる。条例案と無電柱化に関する東京の現状について考察する。
1.都道
条例案では道路法上の管理規定を使い、都道での電柱の新設を認めない。都では歩道に幅約45cmの地上施設を置く関係から、歩道幅員が2.5m以上確保されている都道を整備対象としている。整備対象の長さは2328kmで、これは1164kmの道路両側の長さの合計延長。地中化率は2016年度末で40%となった見込み。都はこれを2020年度に47%とするのを目標としている。
2.区市町村道
東京都建設局の統計(2014年4月1日現在)によると、総延長2358㎞の都道は都内全体の道路の9.6%。2万1744kmの区市町村道が88.8%を占めている。都では区市町村道の地中化率の把握はこれからとのことだが、国土交通省の2013年度末での統計によると都内の地中化率は5%にとどまっていることから、都道と比較してほとんど進んでいないのが推測できる。
条例案では区市町村との連携を明記。また、手厚い無電柱化補助もすでに行っている。「センター・コア・エリア」と呼ばれる首都高速道路中央環状線の内側に当たる都心エリアや主要駅周辺、防災に寄与する区市町村道での費用については国が55%、都が22.5%を補助。オリンピック・パラリンピックの会場周辺では国が55%、都が45%を補助することで区市町村の負担なしで無電柱化を行えるようにしている。開幕までに会場周辺の無電柱化を完了させる計画。
今年度はこの全額補助対象を拡大。区市町村が無電柱化推進計画の策定を行う際にかかる経費、低コスト手法の導入に取り組む区市町村道の工事も対象となる。また財政支援以外にも区市町村の検討会に都から職員を派遣するといった技術支援も行う。
3.コスト削減
都によると無電柱化にかかるコストは現在の共同溝方式でおおむねkm当たり5.3億円。3.5億円が自治体など道路管理者、1.8億円が東京電力やNTTといった電線管理者の負担となる。条例案では関係事業者と協力したコスト削減への技術開発も目指す。交通量の少ないところでは低コストの浅層埋設の導入を推進。共同溝方式をとる場合でも器具や材料を見直すといったことを行う。
4.「小池人気」と条例を突破口にできるか
条例では無電柱化推進計画を策定することを定めている。2016年に成立した「無電柱化の推進に関する法律」に基づき国が計画を作る。都はすでに独自の計画を策定しているが、区市町村や電線管理者と連携し、国の計画と合致するよう計画を手直ししていく。「条例案はこれまでの取り組みを包括して入れこんでおり、なおかつ方向性も明確に示している」(都建設局)ものとなった。また小池百合子知事の強力な発信力により、「無電柱化」という言葉は広く都民・国民に知られている。この追い風を生かし、条例を突破口に無電柱化を進められるか、多くの道路を管理する区市町村へのケアや電線管理者との協力、今後の新たな取り組みといった都の動きが注目される。
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(了)
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