ハザードマップは浸水深だけを見るものではない
想定で使われた流域雨量が災害時の意思決定に役に立つ
気象とコミュニケーションデザイン/
代表
渡邉 俊幸
渡邉 俊幸
2001年より愛知県旧西枇杷島町の防災担当として災害対策に従事。2005年に民間気象会社に移り、情報を伝える側として全国の自治体などに向けて防災気象情報を提供。その後、民間シンクタンクを経て、2013年よりオーストラリア・クイーンズランド大学院修士課程にて気象情報の利用に関する研究を進める。2014年から水害対策で世界の先端を行くオランダに拠点を移し、気象情報の利用や水害対策についてコンサルティングを行う気象とコミュニケーションデザインを設立。2017年から2018年にかけて、世界銀行の防災分野のシニアコンサルタントとしてエチオピア政府を対象としたプロジェクトにも参画。著書は『情報力は、避難力!』。国際基督教大学卒業。1977年、愛知県生まれ。
渡邉 俊幸 の記事をもっとみる >
X閉じる
この機能はリスク対策.PRO限定です。
- クリップ記事やフォロー連載は、マイページでチェック!
- あなただけのマイページが作れます。
はじめに
大雨によって河川があふれ、浸水が発生することを私たちは知っています。しかし、具体的にどういった量の大雨になったら川があふれ、洪水の危険性が高まるのでしょうか? またその時何が起こり得るのでしょうか?
この2つの問いを解く手がかりこそ「浸水想定区域図」です。浸水想定区域図とは洪水のハザードマップとして一般的に知られているものであり、河川が決壊した場合に場所ごとに最大で何メートル浸水する可能性があるかを示す図です。
「どの程度の大雨で?」という問いには、浸水想定区域図の作成過程で使われた流域雨量(シミュレーションの前提条件)に注目することで、「何が起こり得る?」については浸水想定区域図の浸水深を見れば、それぞれ把握できます。
「どのようなときに/何が起こり得るか」の2つをセットで理解しておくことは、災害対策の上で非常に重要です。そのポイントが把握できていると、大雨の際に伝えられる流域の雨量を手掛かりとして、今後何が発生し得るかを具体的に見極めることができます。
今回の記事では、流域の雨量を知っておくことの意義を具体例からお伝えするとともに、浸水想定区域図で使われる流域雨量の調べ方や、大雨で河川が増水する際の流域雨量の把握方法をご紹介したいと思います。
令和元年東日本台風(台風19号)時の荒川のケース
東京都江戸川区は台風19号の接近当日に当たる10月12日(土)午前9時45分、荒川の氾濫を警戒して区内21万4000世帯、43万2000人に避難勧告を発令しました。江戸川区の当時のホームページ上では流域で予測される雨量は触れられなかったのですが、NHKが江戸川区の避難勧告に関して同日12時36分に配信した記事には流域雨量の情報が出てきます(下図)。
この報道を見ると、「台風による雨で荒川流域の平均雨量が500ミリを超える」と予測されたために避難勧告が発令された、とあります。
この数字を見て怖いと思うか、何とも感じないか。ここが分かれ目です。
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方