2020/04/03
危機管理担当者が最低限知っておきたい気象の知識
荒川の場合、流域平均雨量が500ミリを超える見込みという数字は、決壊して大規模な被害が発生することを前提に、即座に防災行動を取らなければならないという強い意味合いを持つものです。
なぜそう言えるのかというと、荒川の浸水想定区域図で使われた想定上の流域雨量が516ミリであるからです。荒川流域がその規模の大雨に見舞われると、江戸川区も無傷ではありません。下図は、その前提に基づいて作成された浸水想定区域図から江戸川区の部分を抜き出したものですが、区内の約半分(新中川から西側の赤色の線で囲まれたエリア)で大規模な床上浸水が起こる可能性が見て取れます。
台風19号当日に報道された荒川流域の平均雨量500ミリはその想定に肉薄する予測でした。まさに浸水想定区域図で示されたような浸水被害に見舞われかねない紙一重の状況に、当時直面していたとも言えます。
この例のように、浸水想定区域図で使われた想定の流域雨量と発生する被害の関係性を知っておけば、河川の水位に関する情報が今後の危機的状況を察知する手がかりになります。
では、どのように想定の流域雨量を把握しておけばよいのでしょうか? その数字は次の2つのステップで簡単に確認することができるので、見ていきましょう。
想定で使われた流域雨量の調べ方
ステップ1:河川管理者のホームページで浸水想定区域図を探す
まずは浸水想定区域図を自治体ではなく、河川管理者(国土交通省や都道府県)のページで確認します。インターネットの検索画面で、「○○川 河川管理者 洪水浸水想定区域図」というキーワードを入れてみましょう。下記の例は、「多摩川 河川管理者 洪水浸水想定区域図」と検索したものです。
河川管理者のページで浸水想定区域図を見ると、上の例のように「想定最大規模」と「計画規模」の2つがあることに気づくと思います。
「計画規模」というのは堤防整備の目標としている流域雨量が降ったという想定でシミュレーションしたもの、「想定最大規模」というのは、想定できる範囲内で最も多い雨が流域に降ったと仮定したものという違いがあります。これらの想定は両方とも重要ですが、河川によっては「想定最大規模」のものが未作成の場合もあります。
なお、自治体が作成するハザードマップや自治体のホームページでは、どちらか一方の想定しか紹介されていないことがあります。このため、国(国土交通省)や都道府県のホームページで該当する河川の浸水想定区域図を検索した方が確実です。
ステップ2:浸水想定区域図の説明文を見る
次に、浸水想定区域図をクリックして開いてみましょう。図の中の説明文に注目します。下の図は荒川の「想定最大規模」の浸水想定区域図(左側)と「計画規模」の浸水想定区域図(右側)を開いた例です。説明文のところ(拡大部分)に算出の前提となる降雨が出てきます。
この図の説明文から、「算出の前提となる降雨」を抜き出してみると次のようになります。
「想定最大規模」:荒川流域の72時間総雨量632ミリ
「計画規模」:荒川流域の72時間総雨量516ミリ
この情報を確認することにより、流域で600ミリクラスの大雨であれば図の左側のような災害が、流域で500ミリクラスの大雨が降る場合は図の右側のような災害が発生すると関連づけることができます。
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