昨年末から今年にかけて、水害リスクに関する情報や緊急時に発表される河川関係の情報のアップデートが相次いでいます。今回の記事では、その中から最も注目すべき3つの変化(①リスク情報の充実、②災害時の情報の一元化、③洪水予報の自由化)を取り上げ、企業による平常時や緊急時の水害対策にどう利用できるかを解説していきます。
①リスク情報の充実
国土交通省は全国の国管理河川を対象に「多段階の浸水想定図」と「水害リスクマップ(浸水頻度図)」を2022年12月に公表しました。これまでも計画規模と想定最大規模を前提条件とした洪水浸水想定区域図(洪水ハザードマップとして公開されているものの元データ)が作られてきましたが、「多段階の浸水想定図」が整備されたことにより、確率的に頻繁に起こると考えられる雨が降った場合の水害リスクも把握できるようになった点が新しい点です(下図参照)。
今回新たに公表された「多段階の浸水想定図」では、計画規模以下の降雨が流域で降ったときの浸水エリアや深さを調べることができます。洪水シミュレーションの前提として今回採用されたのは、10年に1度の雨、30年に1度の雨、50年に1度の雨、100年に1度の雨、150年または200年に1度の雨です。「○年」に入る数字が小さいほど確率が高いので、これらの中では10年に1度の雨が理論上もっとも高頻度で発生する形になります。続いて頻度が高いのが30年に1度、次が50年に1度となります。
実際に「多段階の浸水想定図」を確認し、ある地域が何年に1度の雨で浸水するかをチェックしてみましょう。下の図は東京都などを流れる荒川を対象に調べたものです。荒川下流域では10年に1度の雨では浸水は見込まれないものの、早いところでは30年に1度の雨で被害が出ることなどが分かります。
荒川下流域を例に①から③までの図を抜き出したものが次の図です。色の分布を見ることで河川流域の中で具体的にどの場所がより浸水に見舞われる頻度が高いのかが把握できます。この図で「低頻度」とされる場所でも堤防が耐え切れないほどの雨が降れば水害が発生するので安全を保証する情報ではありませんが、「高頻度」から「中頻度」として分類されるような場所は特に水害リスクが比較的高いと理解し、平常時や緊急時の対策を進めておきましょう。
「多段階の浸水想定図」と「水害リスクマップ(浸水頻度図)」はどちらも国土交通省のホームページにポータルサイトから確認できます。同じ「水害のリスクがある場所」と言っても、10年に1度の雨で浸水するのか、1000年に1度の雨(想定最大規模で使われている雨量)が降った時に初めて浸水するのかでは浸水の可能性が異なります。確率的に見ると前者(10年に1度)の方が高頻度で水害に見舞われかねないため特に水害リスクが高い場所です。浸水の深さだけをチェックするだけではなく、どの程度の雨量で浸水が発生するかや頻度も視点として加えて平常時や緊急時の水害対策を行っていきましょう。
▼水害リスクマップ一覧(国土交通省)
https://www.mlit.go.jp/river/kasen/ryuiki_pro/risk_map.html
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