想定の流域雨量を使った判断と流域平均雨量の調べ方

「想定最大規模」と「計画規模」を比べると、多くの場合で「想定最大規模」の方が浸水の範囲が広く、浸水の深さも深くなります。流域平均雨量の実況や予測が「計画規模」の数字に近づくようであれば災害発生を前提として対処し、実況や予測の流域平均雨量が「想定最大規模」のレベルに近づくようであれば、規模の大きな災害に見舞われることを前提に対処すべきであると考えられます。

流域雨量は、気象庁と河川管理者が共同で発表する指定河川洪水予報で確認ができます。

*指定河川洪水予報のページ(気象庁)
https://www.jma.go.jp/jp/flood/

令和元年の台風19号の際にも、荒川を対象に10月12日14時10分に指定河川洪水予報が発表されました(下図)。主文の次にある雨量の欄(赤で囲んだ部分)を見るとこれまでに211ミリ流域で降っており、さらにこの先3時間で70ミリ降ると予測されています。

写真を拡大 図5 令和元年の台風19号の際に荒川を対象に発表されていた指定河川洪水予報。赤の四角(筆者による加工)で囲んだ部分に流域の雨量が書かれている

指定河川洪水予報は目先2-3時間後までの流域平均雨量を把握する際には優れていますが、(1)河川が一定の水位にならないと発表されない(=河川が実際に増水する前のタイミングでは情報がない)、(2)数時間より先にどう流域雨量が増えるのかは次の情報発表を待たなければならない、(3)どの程度の総雨量となるかはそもそも発表されない、という欠点も抱えています。

なお、本記事でご紹介した指定河川洪水予報ですが、2020年度から6時間先までの水位予測が提供される見込みです。詳しくは下記の記事をご覧ください。
https://www.risktaisaku.com/articles/-/27828

このため、自治体のツイッターや首長個人のツイッター、自治体のホームページ、報道や関係機関(気象庁や河川管理者、自治体など)の記者発表なども含めて広くチェックし、トータルでどの程度の流域雨量になりそうなのか情報を積極的に探すのが正解です。台風19号の例では、冒頭の図1で例示したように、NHKの情報が手がかりとなりました。

皆さんもぜひ、浸水想定区域図を見る際には浸水の深さだけを確認するのでなく、どの程度の流域雨量で/何が起こるかをセットで把握してください。そして、河川が増水するような際には流域雨量の見込みを複数のルートから探り、今後直面し得る状況の把握に努めていただければと思います。