第92回:世界のBCM関係者の懸念は2020年もやはりサイバー攻撃
BCI / Horizon Scan Report 2020
合同会社 Office SRC/
代表
田代 邦幸
田代 邦幸
自動車メーカー、半導体製造装置メーカー勤務を経て、2005年より複数のコンサルティングファームにて、事業継続マネジメント(BCM)や災害対策などに関するコンサルティングに従事した後、独立して2020年に合同会社Office SRCを設立。引き続き同分野のコンサルティングに従事する傍ら、The Business Continuity Institute(BCI)日本支部事務局としての活動などを通して、BCMの普及啓発にも積極的に取り組んでいる。一般社団法人レジリエンス協会 組織レジリエンス研究会座長。BCI Approved Instructor。JQA 認定 ISO/IEC27001 審査員。著書『困難な時代でも企業を存続させる!! 「事業継続マネジメント」実践ガイド』(セルバ出版)
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BCMの専門家や実務者による非営利団体BCI(注1)は2020年3月に、英国規格協会(BSI)と共同で、毎年恒例となっている「Horizon Scan Report」の2020年版を公開した。
Horizon Scanとは、中長期的に将来起こり得る変化や事象を、系統的な調査によって探し出そうとする手法である(注2)。BCIでは2011年から、主にBCI会員を対象として「Horizon Scan Survey」というアンケート調査を毎年実施しており、その結果をまとめた「Horizon Scan Report」を公開している。本稿で紹介させていただくのは、その2020年版である(注3)。
なお、本報告書の回答者の43.2%は欧州、23.1%が南北アメリカ、12.4%がアジアという割合であるから、報告書全体を通して欧州の状況が色濃く反映されているという前提で読む必要がある。
2019年は「健康に関する問題」が増加
調査結果においては、まず過去12カ月間に経験した事象がその頻度(frequency)と影響の大きさ(impact)で評価された結果がリストで示されている。ここでは2019年版までは4年連続で「IT・通信の途絶」(IT and telecom outage)がトップであったが、今年は「健康に関する問題」(Health incident)が僅差ながら逆転してトップとなった。これには業務上の疾病、ストレスやメンタルヘルス、病欠などが含まれる。本報告書本文では、職場におけるレジオネラ症や集団食中毒などの発生によって、事業中断に陥った場合の影響の大きさなどに言及されている。
ただし昨年と今年との間で、選択肢として与えられている事象の定義や範囲が変わっているため、単純比較できないことに注意する必要がある。2020年版においては「健康に関する問題」とは別に「安全に関する問題」(Safety incident)が3位となっており、これには人員の負傷や死亡、報告義務のある事故などが含まれているが、2019年版においてはこれらがまとめて「健康および安全に関する問題」(Health and safety incident)として扱われていた。
本稿のトップに掲載した図は、過去12カ月間に経験した事象を、それらが発生した頻度を横軸に、発生した際の影響の大きさを縦軸にとって整理したものである。影響の大きさの上位2位が「規制当局による執行」(Enforcement by regulator)および「規制の変更」(Regulatory changes)となっているのは、注目に値する。本報告書本文においても、財務面の影響の大きさでトップとなっているのは「規制の変更」であり、これは金融業界からそのような回答が多かったことに起因すると言及されている(注4)。
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