第90回:情報セキュリティーを支える「デジタルアイデンティティ」の現状と課題
Ponemon Institute / The Impact of Unsecured Digital Identities
合同会社 Office SRC/
代表
田代 邦幸
田代 邦幸
自動車メーカー、半導体製造装置メーカー勤務を経て、2005年より複数のコンサルティングファームにて、事業継続マネジメント(BCM)や災害対策などに関するコンサルティングに従事した後、独立して2020年に合同会社Office SRCを設立。引き続き同分野のコンサルティングに従事する傍ら、The Business Continuity Institute(BCI)日本支部事務局としての活動などを通して、BCMの普及啓発にも積極的に取り組んでいる。一般社団法人レジリエンス協会 組織レジリエンス研究会座長。BCI Approved Instructor。JQA 認定 ISO/IEC27001 審査員。著書『困難な時代でも企業を存続させる!! 「事業継続マネジメント」実践ガイド』(セルバ出版)
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米国のPonemon Instituteは 2020年2月に、「The Impact of Unsecured Digital Identities」(以下「本報告書」と略記)という調査報告書を発表した。
本報告書のタイトルにある「digital identities」とは、インターネット上で通信を行う人や組織、コンピューターや周辺機器、ソフトウェアを正しく識別するための技術の総称であり、特に本報告書では暗号鍵(cryptographic keys)とデジタル証明書(digital certificates)とを主な検討対象としている。日本でも情報セキュリティーの分野では「デジタルアイデンティティ」という用語が使われているので(注1)、本稿でも「デジタルアイデンティティ」と表記する。
本報告書は北米地域において、ITおよび情報セキュリティーに関する専門家および実務者を対象として、所属している組織におけるデジタルアイデンティティの管理状況などに関して調査した結果をまとめたものである。調査対象は1万6825人であり、そのうち3.6%に当たる603人から有効回答を得ている。
一般ユーザーの方々の多くはこのような技術にはあまり関心を持っておられないかもしれないが、これらは取り扱いが適切に行われなければ重大なトラブルを招きかねない、情報セキュリティーにおける重要な要素として認識する必要がある。本報告書の回答者が所属する組織のうち73%が、デジタルアイデンティティの管理不備によるシステム停止(unplanned downtime and outages)を経験しており、中でも55%の組織では過去2年間に4回以上、デジタルアイデンティティによる認証に起因するシステム停止を経験している。日本でもデジタル証明書の有効期限切れが原因とみられる大規模な携帯電話網のトラブルが発生した例などがあるので、ご記憶されている方も少なくないであろう。
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