2020/02/12
WITHコロナのBCP
新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない。2月10日時点で中国国内の感染者は4万人超、死亡者は900人を超え、2003年のSARSを上まわった。WHO(世界保健機関)は緊急事態を宣言し、日本政府も水際対策に躍起。乗客に感染者がみつかった大型クルーズ船は現在なお停泊中だ。いま何が起きているのか、これからどうなるのか。東京医科大学病院渡航者医療センター部長で東京医科大学教授の濱田篤郎氏は「局面は次のフェーズへと移行しつつある」と説く。※インタビュー本文は2月6日取材時点の情報にもとづいています。
感染力・致死率ともインフルエンザ並みに
Q1 新型コロナウイルスの感染はいまどのような状況になっているのですか?
昨年12月、動物から人へ感染が始まった当初はほとんどのケースが重症でした。12月いっぱいはそれほど広がっていなかったと思われますが、1月にはすでに人から人へうつるようになっていたと考えられます。
最初は呼吸器の下の方に感染し、肺炎を起こしたりするウイルスでしたが、その後、呼吸器の上の方に感染するようになってきたようです。つまり鼻水や咳の症状がメインになってきた。ウイルスにある程度の変化があったのかもしれません。
肺炎の場合、咳をしてもなかなかウイルスは出てきません。しかし普通の風邪と変わりない症状になると、咳やくしゃみでよく飛び散るわけです。結果、感染しやすくなる。また重症な肺炎は寝ていないといけませんが、症状が軽いと結構動きまわる。それが感染力に拍車をかけたのではないかと思います。
実際、感染者数は1月に入ってから急増し、中国では湖北省を中心に2万8000人くらい(2月6日時点)。実際はその10倍くらいはいるのではないかといわれています。死亡者は500数10人(同)、うち95%が湖北省、武漢ですね※。
湖北省は封鎖されているうえ、もともと医療インフラが整っている場所ではありません。患者が激増し、外にも出られず、かつ医療インフラがよくないとなると、医療を受けようにも受けられない。崩壊状態に近いと思います。
逆にいうと中国のほかの都市、また日本を含むほかの国で亡くなる方の割合は0.1%~0.2%。これは毎年流行する季節性インフルエンザと変わりません。
こうした状況からいえることは、いまのウイルスの状態は、感染力は結構高い。インフルエンザ並みで、1人から3人程度にかかるくらいでしょう。一方重症度という点では、致死率はそれほど高くない。普通の医療が受けられる場所で発病したのであれば、こちらもインフルエンザ並みで、風邪のような症状で終わることが多いか、あるいは無症状で過ごしてしまう人もいる。それがいまの状況です。
※2月10日時点で感染者は4万人超、死亡者は900人超となっている
Q2 無症状または潜伏期間中の人から知らずに感染が広がるおそれはありますか?
ウイルスが広がるメカニズムは、もちろん感染者からうつるのですが、飛沫感染と接触感染が主なルートになります。飛沫感染は、咳やくしゃみをしたとき唾や鼻水にウイルスが入っていて、それを周囲の人が吸い込むわけですね。
しかし実際は、飛んできたウイルスを直接吸い込むことはあまり多くありません。むしろ多いのは、飛び散ったウイルスが机などにくっつく、それを手で触り、鼻や口に運んで、気道に入るという感染経路です。
確かに、無症状であってもウイルスを持っている人はいると思います。しかし無症状だったり、潜伏期間中だったりする場合は、それほど積極的にウイルスを飛び散らせない。やはり発症して咳やくしゃみをしたときに飛び散るわけですから、風邪や肺炎の症状がある人から飛沫感染、接触感染すると考えるのがよいと思います。
WITHコロナのBCP の他の記事
おすすめ記事
-
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2024/12/24
-
-
-
能登の二重被災が語る日本の災害脆弱性
2024 年、能登半島は二つの大きな災害に見舞われました。この多重被災から見えてくる脆弱性は、国全体の問題が能登という地域で集約的に顕在化したもの。能登の姿は明日の日本の姿にほかなりません。近い将来必ず起きる大規模災害への教訓として、能登で何が起きたのかを、金沢大学准教授の青木賢人氏に聞きました。
2024/12/22
-
製品供給は継続もたった1つの部品が再開を左右危機に備えたリソースの見直し
2022年3月、素材メーカーのADEKAの福島・相馬工場が震度6強の福島県沖地震で製品の生産が停止した。2009年からBCMに取り組んできた同工場にとって、東日本大震災以来の被害。復旧までの期間を左右したのは、たった1つの部品だ。BCPによる備えで製品の供給は滞りなく続けられたが、新たな課題も明らかになった。
2024/12/20
-
企業には社会的不正を発生させる素地がある
2024年も残すところわずか10日。産業界に最大の衝撃を与えたのはトヨタの認証不正だろう。グループ会社のダイハツや日野自動車での不正発覚に続き、後を追うかたちとなった。明治大学商学部専任講師の會澤綾子氏によれば企業不正には3つの特徴があり、その一つである社会的不正が注目されているという。會澤氏に、なぜ企業不正は止まないのかを聞いた。
2024/12/20
-
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方