2020/02/04
WITHコロナのBCP
新型コロナウイルスの感染による肺炎が中国を中心に拡大。世界各国で人から人への感染が発生し、日本でも不安が広がっている。いま何が起こっているのか、一般の市民や企業が気をつけるべきことは何か。感染症と公衆衛生を専門とする川崎市健康安全研究所の岡部信彦所長に聞いた。
※本インタビューは1月29日取材時点の情報にもとづいています。
人の行動と環境が変化している
Q1 いまどのような危機が起こっているのですか?
SARS(サーズ)、MERS(マーズ)、新型インフルエンザなど、新しい感染症が数年おきくらいに続けて発生していますね。ここ20~30年、人間がこれまでかかっていなかった感染症が増えてきています。「新興感染症」といっていますが、それが我々の置かれている環境であり、また世界共通の感染症への注意です。
近代初期に流行したような病気は、ずいぶんなくなりました。昔は伝染病(感染症)にかかると打つ手もなく人が死んでいましたが、抗生物質(抗菌薬)やワクチン、治療法の開発、水や食べ物の改善などによって、危険な感染症は我々のそばから遠のいてきたわけですね。
しかし遠のいてきたがゆえに、一時、感染症に対する油断が出ました。たとえば、忘れていた結核が実はいま身のまわりに意外にある、ワクチンを接種しないと麻疹(はしか)が増えてしまうといった油断です。日本になくても海外にはある、ということもあります。
そして最大の問題は、そうした病気が地球上の1カ所の流行では済まなくなってきたこと。アフリカの病気がヨーロッパに来る、中国の病気がアジア全体に広がる、さらに世界に広がる。今回の新型コロナウイルス肺炎もまさにそうしたケースです。
一つには、ヒトやモノの動きが活発になったことがあげられます。短時間に、大量に人やモノが動くということは、同時に、病原体があちこちにバラまかれる可能性も高くなったということです。
もう一つは環境の変化で、人の居住地が広がっていった結果、野生動物との接触が多くなってきた。食料として取り扱う野生動物も含めてです。
以前から人が持っていた感染症は、確かにコントロールされてきました。しかし、動物のなかにいる病原体が、動物だけで循環している分には問題ないのですが、たまたまそこに人が入っていくと、人にとって病気の原因になる。そうした現象が起きやすい環境になっていることも、考えないといけないでしょう。
Q2 新型コロナウイルスの感染はいまどの段階に来ているのですか?
最初は、病原体となった動物に接触した人に偶然うつったと考えられます。そこから、たとえば病人に付き添っている家族などにうつる。濃密な接触による感染です。ただ、インフルエンザのようにどんどん病気を周囲に振りまく状態ではない。最初にウイルスが見つかったときは、そうした段階だったと思います。
しかしいまはもう少し段階が進み、少数の人から人へうつる。以前なら特定の場所にとどまっていたのが、みな活発に動くものだから、動いた先でうつし始める。いまはその段階に来ているとみられます。
WITHコロナのBCP の他の記事
おすすめ記事
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2024/12/24
-
-
-
能登の二重被災が語る日本の災害脆弱性
2024 年、能登半島は二つの大きな災害に見舞われました。この多重被災から見えてくる脆弱性は、国全体の問題が能登という地域で集約的に顕在化したもの。能登の姿は明日の日本の姿にほかなりません。近い将来必ず起きる大規模災害への教訓として、能登で何が起きたのかを、金沢大学准教授の青木賢人氏に聞きました。
2024/12/22
-
製品供給は継続もたった1つの部品が再開を左右危機に備えたリソースの見直し
2022年3月、素材メーカーのADEKAの福島・相馬工場が震度6強の福島県沖地震で製品の生産が停止した。2009年からBCMに取り組んできた同工場にとって、東日本大震災以来の被害。復旧までの期間を左右したのは、たった1つの部品だ。BCPによる備えで製品の供給は滞りなく続けられたが、新たな課題も明らかになった。
2024/12/20
-
企業には社会的不正を発生させる素地がある
2024年も残すところわずか10日。産業界に最大の衝撃を与えたのはトヨタの認証不正だろう。グループ会社のダイハツや日野自動車での不正発覚に続き、後を追うかたちとなった。明治大学商学部専任講師の會澤綾子氏によれば企業不正には3つの特徴があり、その一つである社会的不正が注目されているという。會澤氏に、なぜ企業不正は止まないのかを聞いた。
2024/12/20
-
-
-
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方