インフルエンザと薬は切っても切れない関係ですが、耐性ウイルスなどの問題も抱えています

治療薬開発と耐性を持つウイルスの出現

12月になりましたが、本年の冬の季節性インフルエンザの流行は例年より早く始まり、すでに多くの人が罹患(りかん)しています。しかしながら、インフルエンザ対策、特に治療面で心配される状況が生じています。そこで、今回はその問題を取り上げたく思います。

第二次世界大戦後、細菌性感染病に著効を示す画期的な治療薬として抗生物質が登場し、特効薬として広く使われました。そのおかげで細菌性感染病の発生は激減し、重要な疾病とは認識されなくなりました。しかし、抗生物質は、通常ウイルス病には治療効果を示さないことから、ウイルス病の治療は不可能で、予防のみが効果的な対策と思われていました。

しかし1960年代に、抗インフルエンザウイルス作用を持つ最初の薬品として、アマンタジンがアメリカで開発されました。なお、この薬品はパーキンソン病にも効果を示すことが分かっています。アマンタジンは、A型インフルエンザウイルスのみに効果を示します。アマンタジンの薬理作用は、インフルエンザウイルスが感染した細胞の中で複製される過程で、ウイルス粒子のM2タンパクに結合することによる子孫ウイルスの合成阻止です。アマンタジン耐性インフルエンザウイルスが容易に出現することは、早くから分かっていました。

その後、数種類の抗インフルエンザウイルス薬品が開発されてきました。最近まで、AおよびB型インフルエンザウイルスのノイラミニダーゼ(NA)活性を阻害する薬剤(オセルタミビル、ザナミビル、ラニナミビル、ペラミビル)が主として使用されてきました。

2018年3月に、最新の抗インフルエンザウイルス治療薬として登場したバロキヒル・マルボキシル(商品名:ゾフルーザ)は、これまで汎用されてきたノイラミニダーゼ活性阻害薬を抑えて、用法の容易さ(一度の服用で済ませることが可能)、小児への使用可能などの利点から、約4割の市場シェアを獲得しました。

しかし、2018~19年にかけての冬季のインフルエンザシーズンに国立感染症研究所が実施したインフルエンザウイルス薬剤耐性株に関する調査から、ゾフルーザに対して耐性を示す変異ウイルスが、使用され始めてから時間が経っていないのにもかかわらず、早くも検出されていることが明らかになりました。