トイレは誰が備えるのか?

ところで「防災基本計画」を知っていますか? 防災基本計画というのは、国の災害対策の根幹をなすもので、災害対策基本法第34条に基づき中央防災会議が作成する防災分野の最上位計画として基本的な方針が示されています。この計画に基づき、地方公共団体は地域防災計画を作成しています。そして、市町村におけるトイレの備えは、以下のように記述されていました。

○市町村は,指定避難所において貯水槽,井戸,仮設トイレ,マンホールトイレ,マット,簡易ベッド,非常用電源,衛星携帯電話等の通信機器等のほか,空調,洋式トイレなど,要配慮者にも配慮した施設・設備の整備に努めるとともに,被災者による災害情報の入手に資するテレビ,ラジオ等の機器の整備を図るものとする。

「あれっ、携帯トイレや簡易トイレがないのでは?」と思った方は鋭いです。では、携帯トイレや簡易トイレがどのように記述されているかというと、以下のようになります。

○国〔内閣府等〕,公共機関,地方公共団体等は,防災週間や防災関連行事等を通じ,住民に対し,災害時のシミュレーション結果等を示しながらその危険性を周知するとともに,以下の事項について普及啓発を図るものとする。
・「最低3日間,推奨1週間」分の食料,飲料水,携帯トイレ・簡易トイレ,トイレットペーパー等の備蓄,非常持出品(救急箱,懐中電灯,ラジオ,乾電池等)の準備,…(途中略)…,保険・共済等の生活再建に向けた事前の備え等の家庭での予防・安全対策

そうなんです。基本的には自助なのです。そして、備蓄量は「最低3日間、推奨1週間」です。災害の規模によりますが、水や食料に比べて、トイレは支援が遅れるため、最低でも1週間分を備蓄することが必要だと私は考えています。

市町村は携帯トイレや簡易トイレを備えなくてもよい、という意味ではありません。市町村は指定避難所における生活環境を常に良好にしなくてはならないので、避難者の健康状態や指定避難所の衛生状態、トイレの設置状況などを把握し、必要な対策に取り組みます。その一環として、携帯トイレや簡易トイレを備えますし、外部からの調達も行います。これをサポートするのが主に都道府県であり、国です。経済産業省は民間からの協力を得て、消防庁は被災していない地方公共団体の協力により確保します。

つまり、市民や企業におけるトイレの初動対応は行政を頼るのではなく、積極的に備えておかなければならないのです。特に企業においては、従業員などを一定期間、事業所などの中に留めておくことができるように災害用トイレの備蓄が不可欠です。さらには、集客施設などの管理者は、顧客が帰宅困難者になることが想定されるため、その方々へのトイレの備えも必要になります。

まとめ
□指定避難所におけるトイレの備えを確認
□企業におけるトイレの初動対応は自助が基本
□携帯トイレの備蓄量は1週間分
□従業員および帰宅困難者のためのトイレの備えが必要

(了)