2019/12/25
葛西優香の23区防災ぶらり散歩
徹底的、実践的な訓練により体で覚える
施設の開設状況などの情報をアプリで発信するためには、区と協議会員間での情報共有が不可欠です。9月1日「中央区総合防災訓練」内では情報連携ツールを活用した帰宅困難者対策訓練を実施されました。
訓練での実践に向け、中央区は緻密な事前説明会を実施していました。8月19日、「帰宅困難者支援施設運営協議会」において訓練説明会を実施しました。スマートフォンを片手に訓練に向けて、いや実際の災害時に向けて、模擬演習を行います。訓練の説明会ではありますが、災害時と同様の緊張感で会議を進められている様子が印象的でした。
災害時はゆっくりと時間は流れません。協議会で説明をされる時からスピード感があり、非常に実践的な動きとなっていました。
この実践的な操作を繰り返すことで、いざという時には身体で覚えている。急な対応にも応じられる心と身体の準備ができるのだなと感じる説明会でした。
また、実際に使ってみると「わからない」「使いづらい」など意見も出て、改善にもつながります。まずは、災害時を具体的に想像しながら、実践してみることが一番ですね。
説明会を実施し、臨んだ9月1日の訓練はどのような形で進んだのでしょうか。「スムーズに進んだ訓練となったと思います。しかし、そこが課題かなと。災害時は全てがスムーズに訓練通りにいくわけではありません。混乱が起きた際にどう対応するのか、訓練内で混乱した状態をいかに想像し、対応する体制をイメージしておけるかが次のステップだと思っています」(石橋さん)。
なるほど。発災したときの対応方法を頭と身体で覚えて、行動がスムーズにできるようになり、次は、「混乱」が起きた際にどう対応できるのかという心と判断力を身につけていく段階。
訓練のための訓練ではない、より実践的な取り組みの展開を中央区ではもうすでに築かれ始めているようです。

中央区の防災対策三本柱の内容をお伝えしてきました。東日本大震災発生前から緻密に計画を立て、発災後も経験を踏まえて事業の見直しを丁寧に実践。
区内だけの計画にとどまらず、協働する企業、地域の方々と連携し、また地域の方々同士の連携の機会をも生み出し、災害時に必要な「つながり」を総務部防災課普及係の方々自ら築かれていました。
発災直後、企業の従業員、住民、来街者…立場が違う人たちがビルの前にワッと集結したとき、どのような行動をとることができるか…ちょっと想像してみてください。
自分自身がどんな場所にいて、どのような状態になるのか…その状況になった時にどうすればいいのか…なかなかイメージもつかないですよね。まずは、身近なところで開催されている防災訓練に参加してみるといいのかもしれません。そこで何かヒントが見つかるかも。

(了)
葛西優香の23区防災ぶらり散歩の他の記事
おすすめ記事
-
大阪・関西万博 多難なスタート会場外のリスクにも注視
4月13日、大阪・関西万博が開幕した。約14万1000人が訪れた初日は、通信障害により入場チケットであるQRコード表示に手間取り、入場のために長蛇の列が続いた。インドなど5カ国のパビリオンは工事の遅れで未完成のまま。雨にも見舞われる、多難なスタートとなった。東京オリンピックに続くこの大規模イベントは、開催期間が半年間にもおよぶ。大阪・関西万博のリスクについて、テロ対策や危機管理が専門の板橋功氏に聞いた。
2025/04/15
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/04/15
-
BCMSで社会的供給責任を果たせる体制づくり能登半島地震を機に見直し図り新規訓練を導入
日本精工(東京都品川区、市井明俊代表執行役社長・CEO)は、2024年元日に発生した能登半島地震で、直接的な被害を受けたわけではない。しかし、増加した製品ニーズに応え、社会的供給責任を果たした。また、被害がなくとも明らかになった課題を直視し、対策を進めている。
2025/04/15
-
-
生コン・アスファルト工場の早期再稼働を支援
能登半島地震では、初動や支援における道路の重要性が再認識されました。寸断箇所の啓開にあたる建設業者の尽力はもちろんですが、その後の応急復旧には補修資材が欠かせません。大手プラントメーカーの日工は2025年度、取引先の生コン・アスファルト工場が資材供給を継続するための支援強化に乗り出します。
2025/04/14
-
新任担当者でもすぐに対応できる「アクション・カード」の作り方
4月は人事異動が多く、新たにBCPや防災を担当する人が増える時期である。いざというときの初動を、新任担当者であっても、少しでも早く、そして正確に進められるようにするために、有効なツールとして注目されているのが「アクション・カード」だ。アクション・カードは、災害や緊急事態が発生した際に「誰が・何を・どの順番で行うか」を一覧化した小さなカード形式のツールで、近年では医療機関や行政、企業など幅広い組織で採用されている。
2025/04/12
-
-
-
防災教育を劇的に変える5つのポイント教え方には法則がある!
緊急時に的確な判断と行動を可能にするため、不可欠なのが教育と研修だ。リスクマネジメントやBCMに関連する基本的な知識やスキル習得のために、一般的な授業形式からグループ討議、シミュレーション訓練など多種多様な方法が導入されている。しかし、本当に効果的な「学び」はどのように組み立てるべきなのか。教育工学を専門とする東北学院大学教授の稲垣忠氏に聞いた。
2025/04/10
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方