2019/11/15
アウトドア防災ガイド あんどうりすの『防災・減災りす便り』
対策4 公務員への要求が少ない
これもハリケーンやストーム対策というべきものではないのですが、以前イタリアの避難所を書いた際、こんな事も書きました。
■イタリアの避難所ですぐ届くもの3つって何でしょう?アルファ米とかお弁当とかじゃないですよ!なんと!?
https://www.risktaisaku.com/articles/-/6286
イタリアでは、被災した地域の公務員は、被災業務をしないで通常業務を実施します。被災業務をするのは支援に入った人たちです。被災地の公務員が泊まり込みで業務にあたるなんて、人権上、問題があるのでありません。被災地の公務員が家族旅行に行ったとしても(行かない人がほとんどですが)誰も責めたりしないということでした。災害時の対応というのではないのですが、PEIでも公務員である教師の普段のしばりが少ないのだなと思った事例がこれです。
有料のアスレチックやジップスライドが小学校の横にあるのです。小学生にも大人気のこの場所、経営者は小学校の体育の先生です。先生の副業は禁じられていないので、現役の先生が経営者でも誰も何も言わないし、気にしていません。公務員や教員がひとりの人として人生を楽しむことを誰もが応援している雰囲気を感じます。ちなみに余談ですが、PEIでは先生と相性が悪いからと生徒や保護者が先生を変えてもらうことは普通にあるそうで、クレーマー扱いされるわけではないようです。相性がよくないためにお互いが大変になるより、もっと相性がよい人に先生になってもらうことは、お互いにとっても幸せなことと考えられているようです。
対策5 自分で考えて行動すること 率先避難者になること
これも対策という訳ではありませんが、もしも、避難しなければならない事態になった際、隣の人が逃げてないから逃げ遅れるなんてことはPEIではなさそうだと思っています。というのも、子どもたちは教育の中で自分で考えて行動するよう、幼少期から徹底されているからです。息子が2歳の時PEIを訪れたのですが、2歳の子連れ親子と一緒に食事に行きました。何を食べると聞かれ、その子と同じ食事を頼んだ息子に、その子はすかさず「NO COPY!」と言いました。常に自分の意見を求められているってことですよね。大事なことだなと思いました。
そしてもうひとつ、災害時、たくさん情報を得てもなかなか避難を決断できないという問題があります。これも自分で決断することに慣れていないという幼少期の教育の問題もあるように思っています。例えば、おもちゃの取り合いがあったとします。日本のママたちから子育てあるあるとして、みなさんに共感してもらえるのが、「貸していいよ問題」です。お友達におもちゃを「貸して」と言われれば、国内で、子どもが答えるべき選択肢は「いいよ」一択です。「貸して」と言われれば「いいよ」と言う練習さえします。有名なトロッコ問題よりも選択肢がないです。で、これをPEIでは親がどんなセリフを言っていたかというと「Noの場合は、ちゃんとNoと伝えなさい。そのかわり相手を説得しなさい」というものでした。自分の意見を言っていいんですね。その代わり、自分の意見には責任が伴うということです。PEIで親の全員が子どもにこう言うわけではないですが、自分の意見を述べる訓練をしておらず、周りに合わせるのを良しとする日本の幼児教育からの積み重ねの中にあっては、責任が伴う決断をするのは、ハードルが高すぎることかもしれないと思います。
アウトドア防災ガイド あんどうりすの『防災・減災りす便り』の他の記事
おすすめ記事
-
なぜ製品・サービスの根幹に関わる不正が相次ぐのか?
企業不正が後を絶たない。特に自動車業界が目立つ。燃費や排ガス検査に関連する不正は、2016年以降だけでも三菱自動車とスズキ、SUBARU、日産、マツダで発覚。2023年のダイハツに続き、今年の6月からのトヨタ、マツダ、ホンダ、スズキの認証不正が明らかになった。なぜ、企業は不正を犯すのか。経営学が専門の立命館大学准教授の中原翔氏に聞いた。
2024/11/20
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2024/11/19
-
ランサム攻撃訓練の高度化でBCPを磨き上げる
大手生命保険会社の明治安田生命保険は、全社的サイバー訓練を強化・定期実施しています。ランサムウェア攻撃で引き起こされるシチュエーションを想定して課題を洗い出し、継続的な改善を行ってセキュリティー対策とBCPをブラッシュアップ。システムとネットワークが止まっても重要業務を継続できる態勢と仕組みの構築を目指します。
2024/11/17
-
-
セキュリティーを労働安全のごとく組織に根付かせる
エネルギープラント建設の日揮グループは、サイバーセキュリティーを組織文化に根付かせようと取り組んでいます。持ち株会社の日揮ホールディングスがITの運用ルールやセキュリティー活動を統括し、グループ全体にガバナンスを効かせる体制。守るべき情報と共有すべき情報が重なる建設業の特性を念頭に置き、人の意識に焦点をあてた対策を推し進めます。
2024/11/08
-
-
-
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2024/11/05
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方