2019/11/15
アウトドア防災ガイド あんどうりすの『防災・減災りす便り』
対策2 無電柱化
次に無電柱化です。最近PEIでは住宅需要の拡大から宅地の開発が盛んで、新たに造成されたところはほぼ無電柱化されています。これは美しい景観を保持することで住宅地の価値を高めるために行われていて、とくに行政主導に基づいたことではありません。確かに電柱がなく、視界に遮るものがない風景はすごく美しいのです。そして、無電柱化となっている地域では停電の被害は少なくなりますし、感電事故への対策にもなります。とはいえ、既存の電線を全て地中化するには莫大な時間とコストが必要なので、既存の場所での無電柱化が進んでいるという訳ではなさそうです。
対策3 ラウンドアバウトと4Way StopとDRL
PEIの交差点には信号の他、ラウンドアバウトや4Way Stopがあります。災害の際、停電に影響を受ける信号は、事故につながりかねません。信号を使わないラウンドアバウトとはこんなものです。
PEIの人気ショップもあり、夕日のきれいなスポットであるこの場所は、グーグルマップでみると、ラウンドアバウトになっているのがよく分かります。
国内外のラウンドアバウトについては、国土交通省が効果をまとめていて、災害時の停電対策の他、信号がない横断歩道より、歩行者を優先する傾向にあることや、交差点への進入速度を抑えられることから、交通事故対策としての効果が注目されています。
ただPEIでのラウンドアバウトの歴史は浅く、最近になってようやくその効果が確認されたことで導入が拡大されつつあります。今の段階では、車の流れをスムーズにする効果とスピード減少による車両同士の重大事故の抑制効果を期待する側面が強いようで、多くは郊外で設置されています。コストや用地の問題が解決されれば、市街地での導入も増えてくるのかもしれません。そうなれば歩行者にとっても優しい交差点になることが期待されますね。
ところでPEIに行ってすごく驚いたのは、横断歩道に歩行者がいると、車はほぼ100%止まってくれるということです。それも、だいぶ前から止まって待っていてくれます。ショッピングモールから駐車場への横断歩道でも止まってくれて、本当に徹底されています。歩行者と車はアイコンタクトをとって、車が止まってくれたのを待って渡ることがほとんどですが、中には車は絶対に止まると信じてアイコンタクトのない人もいて、ドライバー側が気を使わなければならない場面も多いとのことです。日本では道路交通法道路交通法第38条第6節の2で横断歩道を横断しようとしている歩行者や自転車がいれば、車は止まる義務があります。でも、2018年の日本自動車連盟(JAF)「信号機のない横断歩道での一時停止率の全国調査」によると9割の車が止まっていないことが分かっています。
■2018年JAF「信号機のない横断歩道での一時停止率の全国調査(2018年調査結果)」
https://jaf.or.jp/common/safety-drive/library/survey-report/2018-crosswalk
PEIではもともと信号のない横断歩道であっても、歩行者のために止まっていたので、ラウンドアバウトの導入の際に、交通安全としての目的は、意識されることもなかったのかもしれないなと想像しました。
PEIでのラウンドアバウトの説明(North River Roundabout、出典:YouTube)
日本でのラウンドアバウトについては、長野県の軽井沢など、いくつか実証実験されており、安全対策や防災対策も観点もあわせて検証されているところです。園児が交差点の事故に巻き込まれて命を奪われるような事はもう決してあってはいけない事ですね。運転者や歩行者に「気をつけよう」という精神論だけでは、事故は防げないので、ラウンドアバウト導入など、さまざまなシステムの検証が必要だと思っています。
PEIではさらに、信号を使わない譲り合い制度、4Way Stopがあります。信号機を使うまでもない小規模な交差点に採用されることが多いです。PEIではどんなに見通しが良くても交差点ではこの方式(4Way、3Way など)によって一時停止することがほとんどです。これに慣れていると停電の場合でも、ドライバー同士で対処できることになります。
Road Rules 4-Way Intersections(出典:YouTube)
また、安全対策ということでいえば、PEIでは昼間でもライトを点灯して走ることが義務付けられています(デイタイムランニングライト、DRL)。このライトは通常のライトとは別の専用のライトです。歩行者や自転車、対向車から、自車の存在が目立つようにし、予防的に安全を図る仕組みなので、欧州連合(EU)では2011年からエンジンをかければ、自動でDRL点灯になる装置が義務付けられています。日本では、2016年からDRL使用が許可されるようにはなりましたが、義務化にはなっていません。日常はもちろん、災害時の安全性を高めるためにも、義務化も今後はあるかもしれませんね。
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