他社へ被害拡大も、早急な対策を
標的型攻撃など拡大、支援利用も

警視庁サイバーセキュリティ対策本部
2016年4月、複雑多様化するサイバー空間の脅威に対処することを目的に設置された警視庁の組織。その業務の一つに、都民及び都内に所在する事業者等に対するサイバーセキュリティ対策や広報啓発活動を実施して、都民生活及び社会経済活動の安全・安心を確保するものがある。
2019/11/01
中小企業をめぐるサイバー情勢と対策
警視庁サイバーセキュリティ対策本部
2016年4月、複雑多様化するサイバー空間の脅威に対処することを目的に設置された警視庁の組織。その業務の一つに、都民及び都内に所在する事業者等に対するサイバーセキュリティ対策や広報啓発活動を実施して、都民生活及び社会経済活動の安全・安心を確保するものがある。
日本の中小企業に対するサイバーセキュリティの環境は、年々深刻さを増してきている。大企業に比べてセキュリティが薄く、一度攻撃に遭うとサプライチェーン全体を巻き込んだ事態にもなりかねない。この連載では警視庁サイバーセキュリティ対策本部から、主に都内中小企業を対象にしたサイバー対策を紹介していく。第1回は担当者に現状分析と中小企業の取り組むべき点について聞いた。
Q:中小企業を狙うサイバー攻撃の傾向について教えてください。
A:全国の統計になりますが、下記の統計のように標的型メール攻撃が増加しています。2017年(平成29年)上期は589件でしたが、同年下期は5438件と約10倍に増加しています。その中で同じ文面のメールを1度に10件以上送るいわゆる「ばらまき型」が、今年の上期の85%を占めています。さらに全体の約9割は送信元のアドレスが偽装されており、有名企業の名前を一文字だけ変える手口が多く使われています。
Q:中小企業に早急に呼びかけたいことは何でしょうか。
A:サプライチェーン攻撃への対策が喫緊の課題です。サプライチェーン攻撃とは、攻撃者がサイバーセキュリティ対策の不十分な中小企業などのパソコンを乗っ取り、大企業などに対してサイバー攻撃を行うことをいいます。サイバー攻撃により乗っ取られた中小企業は被害者的立場であるはずなのに大企業に対しては加害者になってしまいます。また、総務省による「従業員100人以上の企業に対するアンケート」では、昨年(2018年)1年間で55.6%の企業が「ウイルス感染」や「標的型メールの送付」など、何らかの被害を受けている(総務省情報通信白書2019年版)と回答しており、決して他人事とは言えません。
セキュリティ上の不具合がある状態でインターネットに接続していると、パソコンがサイバー攻撃の被害を受ける可能性がありますので、常に最新のOSへアップデートしておく必要があります。とりわけWindows7を使っている場合はサポートが2020年1月に終了しますので、早期にWindows10へバージョンアップする必要があります。またウイルス対策ソフトを導入するほか、パスワードは複雑に、かつ複数のサービスで使い回さないことが大切ですし、最新のセキュリティ情報を入手して、会社内で共有することも有効です。ウイルスに感染して、データが使えなくなるランサムウェアなどへの対策として、定期的にバックアップを取っておくことも必要です。
中小企業をめぐるサイバー情勢と対策の他の記事
おすすめ記事
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/04/01
全社員が「リスクオーナー」リーダーに実践教育
エイブルホールディングス(東京都港区、平田竜史代表取締役社長)は、組織的なリスクマネジメント文化を育むために、土台となる組織風土の構築を進める。全役職員をリスクオーナーに位置づけてリスクマネジメントの自覚を高め、多彩な研修で役職に合致したレベルアップを目指す。
2025/03/18
ソリューションを提示しても経営には響かない
企業を取り巻くデジタルリスクはますます多様化。サイバー攻撃や内部からの情報漏えいのような従来型リスクが進展の様相を見せる一方で、生成 AI のような最新テクノロジーの登場や、国際政治の再編による世界的なパワーバランスの変動への対応が求められている。2025 年のデジタルリスク管理における重要ポイントはどこか。ガートナージャパンでセキュリティーとプライバシー領域の調査、分析を担当する礒田優一氏に聞いた。
2025/03/17
なぜ下請法の勧告が急増しているのか?公取委が注視する金型の無料保管と下請代金の減額
2024年度は下請法の勧告件数が17件と、直近10年で最多を昨年に続き更新している。急増しているのが金型の保管に関する勧告だ。大手ポンプメーカーの荏原製作所、自動車メーカーのトヨタや日産の子会社などへの勧告が相次いだ。また、家電量販店のビックカメラは支払代金の不当な減額で、出版ではKADOKAWAが買いたたきで勧告を受けた。なぜ、下請法による勧告が増えているのか。独占禁止法と下請法に詳しい日比谷総合法律事務所の多田敏明弁護士に聞いた。
2025/03/14
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方