安全を維持するための組織
第5回 仕組みづくりの次に必要なこと
株式会社エバーグローイングパートナーズ代表取締役/
事業成長支援アドバイザー
佐藤 将之
佐藤 将之
アマゾンジャパンの立ち上げメンバーとして、書籍調達部門の責任者、サプライチェーンマネージメント、および物流網の整備など、アマゾン日本法人の土台を築き上げた。拡大期にはFulfillment Centerと呼ばれる全国の物流拠点の立ち上げや地域統括として活躍した。2016年に同社を退職。2018年に株式会社エバーグローイングパートナーズを設立。現在、これまでの経験を活かし経営コンサルタントとして講演、研修、コンサルティング活動を行っている。著書に、『1日のタスクが1時間で片づく アマゾンのスピード仕事術』『アマゾンのすごいルール』などがある。
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前回、アマゾンという会社は全てを仕組化し、顧客満足の向上と同意語として職場の安全を目指しているという話をさせて頂きました。仕組みづくりは非常に大切で、そもそも仕組みなしには安定した運営もさまざまな改善やイノベーションも生まれてきません。しかし、ただ仕組みさえ作ればそれで終わりということではありません。どんなに素晴らしい仕組みを作っても、それを運用する組織、実際にそれを活用する人がいなければ何の役にも立たないのです。よってアマゾンでは、自分たちが作った仕組みが効率よく動くよう、その組織も合わせて作っているのです。特に特徴的な組織のあり方をご紹介します。
本社直属の安全・保安チーム
アマゾンのオペレーション部隊には、安全と保安を専任で扱うチームが存在します。これはオペレーション上最も大切な、安全を維持するために必要不可欠な組織であると考えています。本社には、オペレーション全体の安全と保安を担当するマネージャーが存在し、ネットワーク全体の安全・保安に関する方針決定や施策の立案を行っています。それぞれのフルフィルメントセンター(FCに移行)には各FC専任の安全・保安担当が常駐し、それぞれのFCでの安全・保安に関する施策立案とその実行、KPIの管理などを行っています。ここまでに関しては、おそらく大きな企業であれば同じような組織を持たれているのではないでしょうか?
アマゾンの組織の違う点は、各FCに常駐している安全・保安担当がそれぞれのFCの組織に属しているのではなく、本社のマネージャーに直接レポートする形となり、人事評価なども含め、FCではなく本社のマネージャーが行う形になっていることです。これによって安全・保安部隊の独立性を保つと同時に、全社的な素早い動きにも対応できる組織となっています。
安全対策やそれにまつわる投資などは得てして二の次、三の次となってしまい、コスト改善や品質改善に重きを置かれるのが製造・物流の現場ですが、アマゾンでは、そのような恣意的な動きが発生しないように、安全・保安に関してはFCのセンター長でも踏み込めない権限を持つ場合があるのです。それによって安全を常に最優先できる土台ができているということです。またさまざまな施策を全社的に行う時でも、全社的な指示命令系統が存在することで、施策がスムースにかつ素早く導入できるというメリットも存在します。
当初は、他企業で安全や保安関連の仕事をしていた方たちがメインでその役割を担うことが多かったのですが、最近ではアマゾンで安全を学び、アマゾンの高いレベルでの安全を実施できる人材が育ってきています。現場のオペレーションを担当する社員が安全担当として自ら志願するケースも増えてきています。やはり会社の中でとても大切な指標として認識されていることによってその仕事のやりがいを見出すケースも多いのではないかと考えます。
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