2016/09/01
防災・危機管理ニュース
もしもあなたが防災担当者になったら?
もしあなたが会社で防災担当者になったら
この発想を、企業の中の防災に置き換えてみよう。予算もなく、人手もなく、知識もない。でもやるからには意味のあることをしたいとあなたが考えているなら、まず社内行事を精査してみよう。たとえば以下のような感じだ。
<津波から逃げられるかレース・運動会>
規模を問わず、運動会を開催する企業は意外に多い。その際に「津波から逃げられるかレース」を提案するはどうだろうか。津波の速度は時速36キロと言われている。100m競争などを普通の徒競走にするのではなく、「津波から逃げられる速度で走り抜けられるか?」というものにするのである。
実際に走ってみると100mを10秒で走り抜けなければ時速30キロにすらならず、それはオリンピック選手並みの早さであることが分かるはずだ。企業の運動会は親睦のほかにチームの結束を強くする目的もあるので、どのチームが生き残れるか?! というテーマで対抗戦を行えば盛り上がる上に、いざ津波に遭ったときもどのくらいの早さで逃げればいいかを思い出せるはずである。
<花見>
やはり親睦目的で行われる花見の幹事になったときには、避難経路の確認も前もってしておき、宴会が始まる前に伝達しておく。花見は混雑する公園などで行われることが多いので、地震があったときなど、その場所からどのようにして移動し、どの経路から会社または避難場所へ戻るのかを共有するだけでも、万が一の発災時に行動の早さが異なるだろう。
また、花見の際に使う防寒用品や備品を会社で揃えるのであれば、終了後に社内に防災品としてストックしておくこともできる。たとえばレジャーシートやガスコンロ、懐中電灯や封を開けなかったペットボトルなどは、備蓄にスライドできるだろう。
<社員旅行>
社員旅行はやり方次第で防災力を高められるいい機会だ。東日本大震災以来、多数の会社が取り入れているのは被災地を支援するボランティア活動を組み込んだ旅行である。今でも東北、熊本など多くの地域で人手を必要としている場所がある。旅行会社でも手配をしてくれるところがあるし、被災地支援活動をしているNPOや社団法人などではバスや宿の手配もしてくれるところもある。
東北、熊本ともに「単なる旅行でもぜひ来て欲しい」という声も聞かれる。ただ、今後の防災意識を高めるための旅行なら、現地で支援活動をしていた人の声を聞くことが一番参考になるので、どこかの場面でそのような機会を設けてみたい。
DIGやHUGはチームワークづくりに最適
311ネットが作成した防災教育プログラムはあくまでもひな形。学校には「これを元に、学校の立地や規模に合わせて改変してください」と伝えている。防災はローカルの事情に合わせないと意味がないからだ。

防災教育の中で地域特性が意識できるのがDIG(災害想像ゲーム)だろう。グループに分かれ、学校周辺の地図から学校がどんな場所に建っているのか、ハザードマップによればどのような危険がある場所なのかを読み取りつつ、広域避難場所や避難所、病院はどこにあるのなどを確認していく。さらに、過去のマップとの比較で、その土地の情報(たとえば過去は海や川だったとか)をも把握することで、避難経路を考えたりする作業は、普段何となく歩いている道、眺めている川と災害の関係を見なおすことになる。
もう一つの効果は同じ地図を眺めて話合い、気づきを共有することでチームワークが作られることだ。
たとえばこれが企業のどのような場面で使用できるかというと、新入社員研修をはじめとする研修である。アイスブレイクの効果もあり、お互いを知ることができる上に、防災意識を高めることができる。
また、静岡県が開発したHUG(避難所運営ゲーム)はさらにチームワークを高めるのに有効だ。実際に災害が起こり避難所に人が集まってきたと仮定して、カードに書かれた国籍や性別、既往症や家族構成などを見ながら振り分けや場所を考えたり、医務室やトイレの設置場所を考えたりする中で、突発事態(たとえば取材対応など)が起こり、その対処もしていくのがHUG。

社員それぞれの個性、得意な分野(リーダー向きか、補佐向きかなど)が分かるので、業務にも応用できそうだ。実際に、社員研修でDIGやHUGを行っている企業は結構あるのだ。
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