企業、個人、行政全てに共通する台風15号の課題
想定の甘さと被害状況の確認
リスク対策.com 編集長/
博士(環境人間学)
中澤 幸介
中澤 幸介
新建新聞社取締役専務、兵庫県立大学客員研究員。平成19年に危機管理とBCPの専門誌リスク対策.comを創刊。数多くのBCPの事例を取材。内閣府プロジェクト「平成25年度事業継続マネジメントを 通じた企業防災力の向上に関する調査・検討業務」アドバイザー、内閣府「平成26年度地区防災計画アドバイ ザリーボード」、内閣府「令和7年度多様な主体との連携による防災教育実践活動支援等業務」防災教育チャレンジプラン実行委員など。著書に「被災しても成長できる危機管理攻めの5アプローチ」、LIFE「命を守る教科書」等がある。
中澤 幸介 の記事をもっとみる >
X閉じる
この機能はリスク対策.PRO限定です。
- クリップ記事やフォロー連載は、マイページでチェック!
- あなただけのマイページが作れます。
台風15号対応を検証
令和元年房総半島台風
2019年(令和元年)9月5日に発生した台風。関東地方に上陸したものとしては観測史上最強クラスの勢力で9月9日に上陸し、千葉県を中心に甚大な被害を出した。この台風により、神奈川県と千葉県を中心に首都圏で最大93万戸が停電。千葉県市原市五井のゴルフ練習場「市原ゴルフガーデン」では、ボールネットを支える高さ10メートル以上の複数の鉄柱が、風圧によって倒壊し、近傍の住宅に被害を及ぼした。
いつまで長期化するか分からない大規模停電、被害の全体がいまだにつかめない住宅被害、発災当初に生じた鉄道各社の運休や遅れによる大混雑など、今回の台風15号ではさまざまな問題が露呈した。1週間が経った今、あらためて課題を整理すると、風害への想定の甘さと、被害状況の確認の遅さの2点に集約することができる。
●過去の経験を生かせたか?
停電の見通しの甘さについては、前回の記事でも書いたが、そもそも被害状況の把握ができなかったゆえに生じた問題である。昨年9月4日に関西を直撃した台風21号では、今回の93万軒を大きく上回る約220万軒が停電となり、延べ1300本以上の電柱が折損するなど広範囲にわたって甚大な被害が発生した。その際も「見通しの甘さ」が指摘され、関西電力では昨年12月に発表した検証報告書で、①被害全容の把握に時間を要したことや、②停電状況と復旧見通しの情報提供に時間を要したことを課題に掲げ、今後、被害全容の早期把握に向けた体制整備と調査方法の改善や、停電情報を収集するシステムの強化をしていくことを改善策に盛り込んだ。
関西電力 台風21号対応検証委員会報告
こうした事例が前年に起きているにもかかわらず、今回の台風では現場の被害状況の確認もしないまま、復旧の甘い目標が、あたかも復旧の「見通し」であるように伝えられ、それが五月雨式に繰り返され長引いていった。現場作業員が必死に頑張っても、経営陣や官僚が批判を避けるために根拠なき目標を掲げる陋習(ろうしゅう)はそろそろ変えていかなくてはいけない。
●自社の事業継続が過度な労働負担を強いた?
他の企業はどうであったか? 工務店や建設会社には、屋根の応急修理などの相談が殺到し、対応に手に回らず徹夜状態で働いているという話も聞いた。警備業界でも、信号の停電による交通整理や金融機関の支店やATMの被災・停電により、警備員に無理な負担がかかっている。ある支店前にいた警備員は「突然招集され、朝9時から夜9時までと夜9時から朝9時まで2人で警備を続けている」と話していた。2016年の熊本地震では熊本労働基準監督署が、被災した熊本市民病院で地震後の事務職員1人の時間外労働が労使協定の月の上限を超えたなどとして、市民病院に是正勧告を出している。こうした想定は、本来BCP(事業継続計画)の中で検討しておくべきだが、想定の甘い「しわ寄せ」が現場社員に行くことだけは避けなくてはいけない。各社とも、一段落した段階で、どのような対応をしたかを検証すべきではないか。
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方