金融機関の支店前に立つ警備員。12時間労働に加え通勤時間も長いという

●企業の出社判断はどうだったのか?

個人においても、見通しの甘さは反省すべき点である。台風直撃の翌日に起きた各鉄道の運休や運行の遅れによる大混雑は予測できたはずであるし、防げたはずだ。これも昨年9月30日に関東を直撃した台風24号で経験していることだ。企業が出社判断基準を作るなどしないと従業員では判断できないことも前の記事では書いたが、最終的に自分の命を守るのは自分であることは忘れてはいけない。

●見落とされていた暴風対策

台風による被害を予想するとはどういうことか。平成27年に京都大学防災研究所監修のもと、「台風時の強風災害に対する対応」という小冊子が発行されている。停電に備え予備電池などをしっかり平時から備えておくことや、台風が来ると分かった際は、「屋外の吹き飛ばされそうなものは室内に移動するかロープやネットで固定する」「雨戸のないガラス窓は外側から板でふさぐなど飛来物から守る工夫をする」「冷蔵庫の温度調節を最も低い温度にする(停電対策として)」「窓や雨戸、シャッターを閉める」「ガラス窓のサッシの上下の溝に、細長く折り畳んだ古新聞を詰める」「窓ガラスの飛散を防ぐために、ガムテープを×の字に貼って補強する」「携帯電話やノートパソコンの充電をしておく」など細かな対策が載っている。夜中に台風が来ると分かれば夜中のうちに停電が起きても翌日困らないようにご飯を夜のうちに炊いておく、洗濯を済ませておく、お風呂も早めに入って新しい水を溜めておくなど、できることはたくさんある。もちろん停電が長期化した場合の備えとしては十分ではないが(自治会単位で非常用発電機を購入しておくなどの対策は考えられる)、被害の予測をすることは、あらゆる災害対策の基本である。
台風時の強風災害に対する対応

沖縄建築士会が発行している「わがやの台風対策」も予測を高める上で参考になる。
沖縄建築士会 わが家の台風対策

実際、被災地を回ると、風で飛んできた瓦や植木鉢などで窓が割れたり、壁に穴が開いているケースが多く目につく。「隣の瓦が飛んできて窓を割り、そこに猛烈な勢いの風が入ってきて屋根が吹き飛んだ」という施設もあった。これらの被害を予測して、一人一人が庭の植木類をしっかりしばっておく、窓が割れない工夫をしていたら、多少なりとも減らせた被害もあるのではないか。

南房総市の民間企業。隣の家の瓦が飛んできて壁に多くの穴が(筆者撮影)
壁の中に残っている瓦