2016/07/25
誌面情報 vol56
富士フイルム100%出資の生産子会社である富士フイルム九州は、熊本市街地から10㎞ほど北東の熊本県菊陽町に位置する。フラットパネルディスプレイ材料事業の新たな生産拠点として2005年4月1日に設立された。
同社が製造するのがTACフィルムと呼ばれる、液晶ディスプレイの構成部材である偏光板の保護膜(商品名はフジタック)。光学的に歪みが無く、透明性に優れ、薄く均一で耐久性があるなど優れた特性を持っており、あらゆる液晶表示に使われる偏光板を保護する。富士フイルムグループ全体で、TACフィルムは世界7割のシェアを誇り、富士フイルム九州はその6割を担う。単純に計算して世界市場の4割がこの工場で作られていることになる。仮に長期に工場が停止すれば、液晶を扱う世界中の製品の製造に影響をもたらす。
工場は大きく4棟で構成され、それぞれ生産ラインが2本ずつ整備され計8ラインとなっている。地盤調査に基づき、地震災害に強い耐震設計で建設された。当初から布田川・日奈久断層の存在も把握し、想定震度も算出していたという。さらに2011年の東日本大震災以降は、富士フイルムグループ全体でBCPの構築を進め、年2回のグループ全体の緊急情報共有訓練を行い、富士フイルム九州では、防災訓練、消火訓練なども繰り返し行っていた。また、安否確認訓練は3カ月に1回の頻度で実施していたという。
同社代表取締役社長の鈴木直明氏によると、「東日本大震災以降は、災害への意識が高まり、近年では、夜間の地震を想定した災害対策本部メンバーの参集訓練なども行っていた」とする。今回の熊本地震では、その成果が見事に発揮された。
誌面情報 vol56の他の記事
おすすめ記事
-
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2024/12/24
-
-
-
能登の二重被災が語る日本の災害脆弱性
2024 年、能登半島は二つの大きな災害に見舞われました。この多重被災から見えてくる脆弱性は、国全体の問題が能登という地域で集約的に顕在化したもの。能登の姿は明日の日本の姿にほかなりません。近い将来必ず起きる大規模災害への教訓として、能登で何が起きたのかを、金沢大学准教授の青木賢人氏に聞きました。
2024/12/22
-
製品供給は継続もたった1つの部品が再開を左右危機に備えたリソースの見直し
2022年3月、素材メーカーのADEKAの福島・相馬工場が震度6強の福島県沖地震で製品の生産が停止した。2009年からBCMに取り組んできた同工場にとって、東日本大震災以来の被害。復旧までの期間を左右したのは、たった1つの部品だ。BCPによる備えで製品の供給は滞りなく続けられたが、新たな課題も明らかになった。
2024/12/20
-
企業には社会的不正を発生させる素地がある
2024年も残すところわずか10日。産業界に最大の衝撃を与えたのはトヨタの認証不正だろう。グループ会社のダイハツや日野自動車での不正発覚に続き、後を追うかたちとなった。明治大学商学部専任講師の會澤綾子氏によれば企業不正には3つの特徴があり、その一つである社会的不正が注目されているという。會澤氏に、なぜ企業不正は止まないのかを聞いた。
2024/12/20
-
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方