2019/08/06
アマゾンの強さの秘密は「安全」にあり
メトリックスの確認はSafetyから
「それでは今週のMetricsの確認を始めます。まずSafetyから。今週のRIR(=Recordable Incident Rate)ですがA倉庫とB倉庫でそれぞれ1件の事故が発生しています。それぞれの説明をお願いします。」
「はい、それではA倉庫から報告します。先週火曜日16時34分頃、倉庫内3Fの西側通路で体調不良で座り込んでいる作業員の方が発見されました。管轄のマネージャーに連絡があり、警備隊による車いすの搬送を行い休憩室で容態の確認を行い、かなり症状がひどいため救急車による搬送へと切り替えました。医師の診察では、軽い熱中症ということで、点滴が施され、回復後、作業員の方は帰宅されました。今回の事故の原因は、南側通路だったことから明り取りの窓からの西日が差し込んでおり、その西日が直接当たる場所で作業していたことが原因と思われます。実際に翌日同じ天気での計測で32度を記録していました。対策としては作業位置の変更および西側の明り取りの窓の遮蔽を行い、温度上昇と体温上昇を防いでまいります。また追加対策として、2時間おきの水分補給の休憩を設けると共に、マネージャーによる巡回の強化をしてまいります」
「ありがとうございます。皆さんから何かご質問等はありませんか?」
「明り取りの窓を遮蔽するということですが、それによって庫内の照度の変化はどうなりますか? それによる副次的な問題は発生しませんか?」
「はい、実際に遮蔽後、照度の確認を行いましたが、基準はクリアーしており、作業場の問題はありません」
「ありがとうございます」
上記のように会議の中で安全は他の指標、品質、納期、コストよりも上位に位置し、最も時間をかけて話がされるパートになります。特に原因解析と対策は徹底して行われます。それに対しての対策も暫定対策と恒久対策に分けて計画され即時実行することが決まりとなっています。また同様の環境や設備、作業方法などがないか他の倉庫にも同時に共有され、必要な対策が取られていきます。このようにネットワークとして事故のリスクを常に最小化する努力が行われ、それぞれの倉庫のリーダーシップチームは、より安全な職場環境を維持することを第一として日々の業務を行っているのです。
生産性の高い現場は安全な現場でのみ達成される
安全第一という標語は時としてお飾りになり、実際にはコスト優先、納期優先という環境が見受けられることも多々ありますが、アマゾンではそこは決して曲げず、常に安全優先でマネージメントが行われています。それはアマゾンに安全の文化を持ち込んだJeff Wilkeの思いだけでなく、真の品質が高く生産性の高い現場は安全な現場でのみ達成されるという信念を、それぞれのリーダーシップチームが常に意識していることだと思います。
Amazon JapanのオペレーションのトップであるJeff Hayashida(ジェフ・ハヤシダ)氏は「Safety is a sign of respect. (安全は他者に対する敬意の表れである)」という言葉を常に使っています。常に他者を敬い、敬意を表すことこそが安全を守っていく理由なのであるということでしょうか。
(了)
アマゾンの強さの秘密は「安全」にありの他の記事
- 安全を維持するための組織
- アマゾンにおける安全の仕組みづくり
- 安全を維持するために~Day 1
- 「安全は他者に対する敬意の表れである」
- アマゾンのスピードを支える安全文化
おすすめ記事
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/04/01
-
-
-
-
-
全社員が「リスクオーナー」リーダーに実践教育
エイブルホールディングス(東京都港区、平田竜史代表取締役社長)は、組織的なリスクマネジメント文化を育むために、土台となる組織風土の構築を進める。全役職員をリスクオーナーに位置づけてリスクマネジメントの自覚を高め、多彩な研修で役職に合致したレベルアップを目指す。
2025/03/18
-
ソリューションを提示しても経営には響かない
企業を取り巻くデジタルリスクはますます多様化。サイバー攻撃や内部からの情報漏えいのような従来型リスクが進展の様相を見せる一方で、生成 AI のような最新テクノロジーの登場や、国際政治の再編による世界的なパワーバランスの変動への対応が求められている。2025 年のデジタルリスク管理における重要ポイントはどこか。ガートナージャパンでセキュリティーとプライバシー領域の調査、分析を担当する礒田優一氏に聞いた。
2025/03/17
-
-
-
なぜ下請法の勧告が急増しているのか?公取委が注視する金型の無料保管と下請代金の減額
2024年度は下請法の勧告件数が17件と、直近10年で最多を昨年に続き更新している。急増しているのが金型の保管に関する勧告だ。大手ポンプメーカーの荏原製作所、自動車メーカーのトヨタや日産の子会社などへの勧告が相次いだ。また、家電量販店のビックカメラは支払代金の不当な減額で、出版ではKADOKAWAが買いたたきで勧告を受けた。なぜ、下請法による勧告が増えているのか。独占禁止法と下請法に詳しい日比谷総合法律事務所の多田敏明弁護士に聞いた。
2025/03/14
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方