災害が発生すると、病院はけが人や急病人であふれ、医師、看護師は緊迫した状況に追い込まれます。病院の建物が損壊したり、機器類が揺れや浸水により損壊したり、あるいはライフラインが停止してトイレが使えない、手洗いもできないなど、衛生的であるはずの病院が一挙に変貌します。そんな中で、入院患者の食事の準備などができるはずがありません。入院患者、医師、看護師の食事は全て備蓄食料(災害食)でまかなわなければなりません。大災害に備えて病院はその用意をしているはずですが、果たしてどうでしょうか。

阪神・淡路大震災における病院での食事

阪神・淡路大震災の時を振り返ってみましょう。神戸市、芦屋市の9つの病院の看護師63人に、震災直後の病院内での食事内容について調査をしたことがありますが、その結果、1位おにぎり、2位パン、3位弁当、4位カップラーメンの順で主食ばかりが多く、“おかず”となる食べ物は、挙げられた主食の数に比べると5分の1でした。さらに、食事と一緒に飲み物を飲んだ人はわずか11%しかいませんでした。救援物資が届くころでも、震災直後と同じように主食に偏った食事でした。

病院で働く看護師自身が被災者だったにも関わらず、何日間も病院に寝泊まりして、運び込まれる患者のために頑張りました。また病院はけが人や病弱者の避難所的な役割も背負っていました。中には院内が遺体置き場になるケースも多かったといいます。

せっかく届いた救援物資の食べ物は消費期限切れで処分することが多く、災害時の病院の混乱はひどいものでした(詳しくは拙著『働く人の災害食―神戸からの伝言』<編集工房ノア2008:阪神・淡路大震災での病院看護師の飲食と仕事の実態90~105ページ>)参照。

関西と関東の2つの病院備蓄を検証

■関西K病院
さて、今回は関西と関東から2つの病院を取り上げ、備蓄の現状をご紹介したいと思います。
まず関西の例として大阪府狭山市にあるK病院の例をご紹介しましょう。この病院は800人分の入院患者用の飲み物と食べ物を3日分備蓄しています(表)。