ものごとを表面的に捉え、問題点を指摘するだけの批判をしてはならないと強く思う。まして現場から離れた遠くの場所から、安易な批判をすることは避けなければならない。これは、私自身の自戒でもある。

益城町に設置された避難所 写真:The New York Timesアフロ

孤独にしてはならない

被災すると、実に多くの関係機関、マスコミがどっと押し寄せる。それぞれに支援の熱意、ミッションを持っているが、受け止めるほうは1つだ。重要な判断、要人対応やマスコミ対応は首長の仕事だが、非常に孤独である。たとえば、今後、仮設住宅用地を確保する時期が来るが、学校の校庭に建てるか否か、などはどちらに決断しても厳しい批判が待っている。

このとき、経験ある首長や補佐役がサポートしてくれれば、どれほど心強いだろうか。また、実務では、役所内部、関係機関相互の情報共有、連携の調整作業が非常に多数発生する。膨大な量があり、かつ不慣れな業務であるため、課長をサポートする人材、課長の相談役になる人材が必要だ。

現場でも、たとえば私は福祉避難所の調整に従事したが、ひとりを動かすために本人、家族、ケアマネ、施設幹部、担当の職員と多くの調整が必要だ。これを何十人と繰り返す。これからもっと増えていく。

東日本大震災、そして熊本地震の応急対策の現場では、消防、警察、自衛隊、国交省、水道、ガス、電気など組織的広域連携体制の力が光った。このシステムを市町村に持ち込むのはどうか。

たとえば、被災地で幹部職員として経験のある市町村職員の登録システムを作り、平時から内閣府兼務辞令を交付する。発災時には、直ちに内閣府の一員として被災地自治体に派遣し、それぞれの災害対策本部で首長、幹部職員を市町村の立場で支援する。さらに、現場で動ける一定の経験を持った市町村職員を登録しておき、災害時には要請を待たずに市町村に業務別に数十人規模で派遣する。このような行政版支援チームを制度化することが、小規模自治体を支援するには極めて有効と実感した。

 

 

鍵屋 一(かぎや・はじめ)
跡見学園女子大学観光コミュニティ学部教授
東京都板橋区で防災課長、板橋福祉事務所長、福祉部長、危機管理担当部長等を務め、2015 年4月から現職。
京都大学博士(情報学)。名古屋大学大学院講師、法政大学大学院講師、内閣官房地域活性化伝道師。地域防災全般、特に自治体の防災対策全般、災害時要援護者支援、福祉施設の事業継続計画(BCP)、マンション防災、地区防災計画
などを研究、実践している。NPO法人東京いのちのポータルサイト副理事長、NPO法人事業継続推進機構理事、認定NPO法人災害福祉広域支援ネットワークサンダーバード理事、(一社)マンション生活継続支援協会副理事長などで社会活動や講演活動を積極的に行い、防災・危機管理の情報発信を行っている。