大船渡報告(その4)・・公営住宅の多様化と標準化【東日本大震災】(5月22日のFBより)
室﨑 益輝
神戸大学名誉教授、ひょうご震災記念21世紀研究機構副理事長、兵庫県立大学防災教育研究センター長、ひょうごボランタリープラザ所長、海外災害援助市民センター副代表
2016/05/23
室﨑先生のふぇいすぶっく
室﨑 益輝
神戸大学名誉教授、ひょうご震災記念21世紀研究機構副理事長、兵庫県立大学防災教育研究センター長、ひょうごボランタリープラザ所長、海外災害援助市民センター副代表
大船渡報告(その4)・・公営住宅の多様化と標準化
連続投稿、ごめんなさい。
熊本を意識しながら、大船渡を学習しています。
多様な被災者のニーズや多様な被災地域の実態に、いかに弾力的に答えるかが、災害公営住宅の整備には求められています。一般的には、災害公営住宅は、多様なニーズに細やかに対応する、時間的かつ空間的な余裕はなく、間取りも含めて標準化をはかり、結果としてRCアパートで対応するのが、中越地震以前までは一般的でした。
ところが、中越のような土着の文化がある地域、自然の豊かな祖散な、耐久性や経済性の論理だけで、公営住宅を考えていいのかということになりました。そこに、内田雄三さんや三井所清典さんたちによる、伝統木造工法による木造公営住宅の提案が生まれました。
大船渡では、従来型のRCアパートと新規型の木造住宅の2つを、地域特性に応じて「使い分け」する方式が取られています。木造公営は、田野畑村などの取り組みと軌を一にしています。
木造公営に関しては、中越や能登の精神を受け継ぎつつ、(1)地域に根差した気仙沼様式をとりいれる、(2)4戸1棟(2階建て)、2戸1棟(1階建て)、1戸建て(1階建て)の3種類のパターンを設けることにより、地域に即した選択を可能にするとともに、多様化と標準化の統合をはかっていることが、評価できます。
木造1戸建ての公営住宅を認めていること、自力移転住宅との共存をはかっていること、豊かな外部スペースを提供していることなど、他地域の公営住宅のいいとこをすべて取り入れています。
熊本も参考にしてほしいと思います。
室﨑先生のふぇいすぶっくの他の記事
おすすめ記事
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2024/12/24
能登の二重被災が語る日本の災害脆弱性
2024 年、能登半島は二つの大きな災害に見舞われました。この多重被災から見えてくる脆弱性は、国全体の問題が能登という地域で集約的に顕在化したもの。能登の姿は明日の日本の姿にほかなりません。近い将来必ず起きる大規模災害への教訓として、能登で何が起きたのかを、金沢大学准教授の青木賢人氏に聞きました。
2024/12/22
製品供給は継続もたった1つの部品が再開を左右危機に備えたリソースの見直し
2022年3月、素材メーカーのADEKAの福島・相馬工場が震度6強の福島県沖地震で製品の生産が停止した。2009年からBCMに取り組んできた同工場にとって、東日本大震災以来の被害。復旧までの期間を左右したのは、たった1つの部品だ。BCPによる備えで製品の供給は滞りなく続けられたが、新たな課題も明らかになった。
2024/12/20
企業には社会的不正を発生させる素地がある
2024年も残すところわずか10日。産業界に最大の衝撃を与えたのはトヨタの認証不正だろう。グループ会社のダイハツや日野自動車での不正発覚に続き、後を追うかたちとなった。明治大学商学部専任講師の會澤綾子氏によれば企業不正には3つの特徴があり、その一つである社会的不正が注目されているという。會澤氏に、なぜ企業不正は止まないのかを聞いた。
2024/12/20
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方