愚痴というかお説教です。(り災証明の発行について)【熊本地震】(5月23日のFBより)

室﨑 益輝
神戸大学名誉教授、ひょうご震災記念21世紀研究機構副理事長、兵庫県立大学防災教育研究センター長、ひょうごボランタリープラザ所長、海外災害援助市民センター副代表
2016/05/23
室﨑先生のふぇいすぶっく
室﨑 益輝
神戸大学名誉教授、ひょうご震災記念21世紀研究機構副理事長、兵庫県立大学防災教育研究センター長、ひょうごボランタリープラザ所長、海外災害援助市民センター副代表
熊本地震について、今回はつぶやきではなく、愚痴というかお説教です。
フェースブックのお友達には、行政関係の方が少ないのがとても残念なのですが、ぜひとも行政関係の皆さんに読んでいただきたいと思ってコメントします。
すでにコメントしている通り、私自身は、今の「り災証明」のあり方や進め方には、大きな疑義を持っています。根本から、その仕組みと運用の改善をはからないといけない、とも思っています。
とはいうものの、「り災証明を、仮設の入居や公費解体などの前提にする」「り災証明調査を、建築にはほとんど素人な職員でする」「り災証明調査では、被災者とのコミュニケーションをほとんどはからない」といった問題点を抱えながら、行政的形式主義で仕組みとして一人歩きしているので、そのり災証明の運用を前提にして、やむを得ず被災者の救援のあり方について、コメントせざるを得なくなりました。
行政の方には、り災証明は被災者の救援のために行うものという原点、全壊や大規模損壊あるいは半壊の認定は、行政職員という人間にゆだねられているという原則を、忘れないでいただきたいと思います。認定は、雁字搦めの基準やコンピューターがするのではなく、温かい血が流れている人間がするのです。
ところで、り災証明の今の運用だと、その結果によって被災者の運命は大きく左右されます。それだけに、被災者を苦しめないよう、誤診を下さないよう、しっかりと見なければなりません。被災者からすると、建築のことも知らない藪医者もどきに見てもらうよりは、建築をよく知った優れた医者に診てもらいたいはずです。それが、人員や能力の面でかなわないとすれば、せめて「赤ひげの医者」の心をもって、被災者に向き合ってください。
今のり災証明は、とりあえず急ぐということで、外観の目視で簡単に判断します。レントゲンも取らず、血液検査もしないのです。それだけに、間違った判定は避けられないということなので、被災者に正々堂々とクレームをする権利を認めています。家の中を見ていないのだから、その経済的被害の評価などは大きく違ってくるはずなので、おかしいと思った人は、異議の申し立てをしなければなりません、その意義申し立ては権利であり、義務でもあります。
ところで、被災者が異議を申し立てると、「なぜ異議を唱えるのか」「判定は正しいので我慢しろ」と言って、門前払いを行政からされたという話を聞きました。それは、多分聞き間違いだと思うのですが、もしそうだとしたらとんでもないことで、人権蹂躙極まりないことです。行政の皆さん、異議申し立てをあったかく受け止め、精緻な再調査をして、被災者に寄り添ってください。
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