「罹災証明調査」が遅れており、結果として解体が進みません【熊本地震】(5月11日のFBより)
室﨑 益輝
神戸大学名誉教授、ひょうご震災記念21世紀研究機構副理事長、兵庫県立大学防災教育研究センター長、ひょうごボランタリープラザ所長、海外災害援助市民センター副代表
2016/05/11
室﨑先生のふぇいすぶっく
室﨑 益輝
神戸大学名誉教授、ひょうご震災記念21世紀研究機構副理事長、兵庫県立大学防災教育研究センター長、ひょうごボランタリープラザ所長、海外災害援助市民センター副代表
被災地を見て歩いた時に、とりわけ気になったことは、今にも道路側に倒壊する危険のある建物が少なくなく、その横を人や車が通行していたことです。それだけでなく、瓦礫の山状態になった家屋からは様々なものが飛散していました。アスベストは含まれていないかもしれませんが、塵埃による健康被害を招きかねないと思いました。壊れた建物がいつまでも放置されていることは、心理的にもよくありません。
2次災害防止をはかるためにも、壊れたブロック塀の撤去、落ちかかっている瓦の処分、壊れた家屋の取り壊しと処分が急がれます。ブロック塀の処分や、倒れ掛かっている家屋の解体が済めば、赤紙を貼られている家も緑紙に変わり、自宅での居住が可能になる人も少なくありません。
ところが、解体の要件となる「罹災証明調査」が遅れており、結果として解体が進みません。その中で何とかしたいと思う被災者が多いのですが、罹災証明がないと不利益を受けるということで、被災者自身が手を加えて片づけること、業者や重機ボランテイアに頼んで解体することを、躊躇しています。
行政も公費解体について、住家被害の認定が出るまで、また行政が依頼した解体業者が行くまで「待て」という、メッセージを発信しています。その結果として、倒壊した家屋、危険な家屋がいつまでも放置される状況が生まれています。
阪神・淡路大震災の時も紆余曲折があったのですが、公費解体の措置が取られ、被災者の経済的負担がなくなりました。そのとき、行政発注方式だけでは、いつまでたっても解体が進みませんでした。そこで取られたのが、自衛隊による解体、第三者契約による解体、清算による解体です。被災者は写真をとっておき、自ら民間業者と契約し、その請求書を行政に回すことが、認められました。そのことで、解体と後片付けは一気に進みました。
被災者自らが業者と契約したほうが、2次災害も防止でき、復興は早く進むのです。被災者がかってに業者に頼んだ場合は、公費負担をしないというのが、今回の方針だそうですが、それでは、いつまでたっても倒壊した家屋はなくなりません。
なお、解体処分とりわけ公費解体の危険性についてコメントしておきます。家の中にある貴重品や思い出の品がごみのように扱われて捨てられる恐れがあるということです。重機ボランテイアがされているような「事前に貴重品等を取り出す手順」を踏む必要があります。
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