2019/04/26
危機管理の神髄
変種の悪人
警察関係の専門家によれば一番の心配はインターネットによる重要なインフラへの攻撃である。サイバー戦争の時代に、悪人が必要とする唯一の武器はノートパソコンである。サイバー犯罪者による攻撃の影響は金融上のものであり、被害者にとっては壊滅的なものになりうるが、巨大都市にとってはシステム上のものである。
いわゆるサイバー犯罪の脅威の及ぶ射程は果てしない。攻撃側の力と洗練度は高まるのに対して、防御側の能力は弱まるばかりなので、両者のギャップはどんどん開いている。敵国やハッカーからテロリストにいたるまで、変種の悪人は、全国高圧送電線網を動かしている最も脆弱なコントロールシステムを狙うためにダークウェブの保護マントを使用している。例えば2015年、監視制御システム(SCADA)と呼ばれるコントロールシステムが攻撃されて、ウクライナの電力網の一部が遮断された。1年後にはロシアのハッカーが変電所を攻撃してキエフの広域が停電となった。
全国高圧送電線網への大規模な攻撃があれば、国土の広大な一帯が暗黒時代に逆戻りするかもしれない。米イラク駐留軍前司令官のロイド・オースチン大将によれば、それは「起きるか起きないか」ではなく「いつ起きるか」である。
我々の果敢で新しい「モノのインターネット(IoT)」の世界は、携帯電話からコーヒーメーカー、ジェットエンジン、油田掘削機まであらゆるモノを含む。問題はそれらのスマート・デバイスの大部分にはあまり、あるいはまったくセキュリティ対策がなされていないことである。インターネットにつながるモノが増えれば、それだけ直接攻撃されるリスクも高まる。
そして我々の核兵器庫をコントロールするシステムへのサイバー攻撃がありうる。これらのいわゆるゼロデイ攻撃はミサイルの発射、あるいは我々のミサイル防衛網を無力化するために利用される。危機のとき核兵器の使用を考える大統領は、我々のコマンド・コントロールシステムが安全を保証されたものか確信できないだろう。早くに核兵器の使用を決定せざるをえなくなるか、あるいはその決定を現場の軍司令官に委ねざるをえないかもしれない。
おすすめ記事
-
なぜ製品・サービスの根幹に関わる不正が相次ぐのか?
企業不正が後を絶たない。特に自動車業界が目立つ。燃費や排ガス検査に関連する不正は、2016年以降だけでも三菱自動車とスズキ、SUBARU、日産、マツダで発覚。2023年のダイハツに続き、今年の6月からのトヨタ、マツダ、ホンダ、スズキの認証不正が明らかになった。なぜ、企業は不正を犯すのか。経営学が専門の立命館大学准教授の中原翔氏に聞いた。
2024/11/20
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2024/11/19
-
ランサム攻撃訓練の高度化でBCPを磨き上げる
大手生命保険会社の明治安田生命保険は、全社的サイバー訓練を強化・定期実施しています。ランサムウェア攻撃で引き起こされるシチュエーションを想定して課題を洗い出し、継続的な改善を行ってセキュリティー対策とBCPをブラッシュアップ。システムとネットワークが止まっても重要業務を継続できる態勢と仕組みの構築を目指します。
2024/11/17
-
-
セキュリティーを労働安全のごとく組織に根付かせる
エネルギープラント建設の日揮グループは、サイバーセキュリティーを組織文化に根付かせようと取り組んでいます。持ち株会社の日揮ホールディングスがITの運用ルールやセキュリティー活動を統括し、グループ全体にガバナンスを効かせる体制。守るべき情報と共有すべき情報が重なる建設業の特性を念頭に置き、人の意識に焦点をあてた対策を推し進めます。
2024/11/08
-
-
-
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2024/11/05
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方