日頃から重大な災害が起こる可能性を認識しておくことが、被害軽減につながる(写真は2016年の熊本地震の様子)

■「対岸の火事」から「他山の石」へ

前回の最後に、日ごろから「災害を忘れない」「災害に関心を持ち続ける」ための工夫を一つ紹介した。それはディザスター映画のような大災害の残像を脳裏に焼き付けることではなく、もっと身近な目の前の小さな災害リスクに焦点を当てることであった。リスクが潜んでいるかどうかはっきりしないときは、声に出して「ここにリスクはないか?」と自問自答する習慣をつければよいとも述べた。

さて今回は、「災害を忘れない」ためのもう一つのアプローチについて述べてみたい。それは災害を経験した企業の教訓に目を通すことである。一般に「災害の教訓」をテーマとした情報(ルポ、ドキュメント番組、書籍など)は、災害の悲惨さをともすれば情緒的に訴え、ストレートに視聴者や読者の共感を得ることが目的であるだけに、会社組織よりも個人や家族、地域社会に焦点を当てたものがほとんどだ。ビジネスの世界では、他社の災害の教訓などは対岸の火事的な目で見られることが多いのである。

しかし、これからBCPを策定する、あるいは策定したBCPを今後きっちり管理していくという明確な目標を持っている会社にとっては、被災企業の教訓は自社のBCPの考え方に有形・無形のポジティブな影響を与えるだろう。災害リスクに対する感度を磨いておくと同時に、他社が何を体験しどのような手段で災害を生き延びたか、その手がかりを探っておくことはBCPにかかわる者にとって基本中の基本である。