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前回は、印刷業が平時に取り組んでおきたい項目を中心に検討を進めてきた。今回は、発災直前および発災後における印刷業の事業継続に関する具体策を検討する。

編集部注:「リスク対策.com」本誌2015年9月25日号(Vol.50)掲載の連載を、Web記事として再掲したものです。(2016年9月16日)

気象情報に基づく発災直前の被害軽減策
印刷業は、紙を大量に使用する事業の性質上、洪水などの水害には特に弱い。ただ、水害は、発災の前から発表されるさまざまな気象情報等に基づき、発災直前まで被害を軽減するための対応をとることができる。この点、現在の最先端の技術を用いても、発災数十秒前に検知することができるにとどまる地震災害とは異なる。気象情報等の発表主体や発表タイミングを表1として取りまとめた。

気象情報と洪水予報
気象情報は、警報や注意報の発表が予測される段階において注意や警戒を呼びかける目的で気象庁が発表する情報である。この段階では「大雨に関する全般的な気象情報」といった題名で発表される。この情報の対象は全国である。 

その後、悪天候の発生が確実な状況となった段階で、気象庁は、気象警報・注意報を発表する。我々がよく目にする大雨注意報や洪水警報といった情報である。注意報は、気象により災害が起こるおそれのある場合を指し、警報は重大な災害が起こるおそれのある場合をいう。これらの警報・注意報は、気象現象が発生する概ね3~6時間前に、市区町村単位で発表される。 

警報や注意報の発表中にも、現象の経過、今後の予想、防災上の留意点等を解説する目的で気象情報が発表される。この段階では、地方や都道府県単位の気象情報が発表されることが多い。なお、領域が広い北海道や沖縄県ではより細かい単位で発表される。警報や注意報の発表中は、気象情報にもあわせて目を通す必要がある。 

記録的短時間大雨情報とは、数年に一度程度しか発生しないような短時間の大雨が確認された場合に、各地の気象台が発表する。この情報には、観測点名や市町村等が明記される。大雨警報が出ている間に、記録的短時間大雨情報があわせて発表されるのは、水害の危険が相当程度高まっていることを示している。 

一方、洪水予報は、河川管理者と気象庁が共同で発表するものであり、いくつかの種類がある(表2)。

日本の河川は、主に国が管理する一級水系と都道府県が管理する二級水系、市町村が管理する河川に分かれているが、このうち、洪水予報は、一級水系と二級水系に属する河川の中で、「洪水が生じると国民経済上大きな損害を生ずるおそれがあるもの」として指定された洪水予報河川のみに発表される。民間企業としては、自社の事業所の近くの河川のうち、どれが洪水予報河川なのかだけでも把握しておくとよいだろう。