戦時下の外交官吉田茂・検挙事件
戦争収束に動いた親英米派外交官の苦闘

高崎 哲郎
1948年、栃木県生まれ、NHK政治記者などを経て帝京大学教授(マスコミ論、時事英語)となる。この間、自然災害(水害・土石流・津波など)のノンフィクションや人物評伝等を刊行、著作数は30冊にのぼる。うち3冊が英訳された。東工大、東北大などの非常勤講師を務め、明治期以降の優れた土木技師の人生哲学を講義し、各地で講演を行う。現在は著述に専念。
2019/03/11
安心、それが最大の敵だ
高崎 哲郎
1948年、栃木県生まれ、NHK政治記者などを経て帝京大学教授(マスコミ論、時事英語)となる。この間、自然災害(水害・土石流・津波など)のノンフィクションや人物評伝等を刊行、著作数は30冊にのぼる。うち3冊が英訳された。東工大、東北大などの非常勤講師を務め、明治期以降の優れた土木技師の人生哲学を講義し、各地で講演を行う。現在は著述に専念。
戦前の英米派外交官吉田茂(後の首相)の戦時下における反軍思想とその苦闘を考える。
太平洋戦争は日本敗北に大きく傾いていた。昭和20年(1945)4月1日、米軍は艦船1457隻を総動員し、総兵力18万3000人をもって、沖縄本島の嘉手納海岸に上陸するとともに、進攻を開始した。4月12日には、<日本連合艦隊の第二次総攻撃が開始され、沖縄侵攻の米軍の損害は甚大となり>、との外電報道(虚報)は大本営の決戦思想をかき立てていた。これに煽られるように国内の報道機関(新聞・ラジオ)も一斉に沖縄決戦を高唱して、戦局の実相を知らされぬ国民は、神頼み的に戦勢の挽回を信じ、かつ期待していた。軍部の暴走が続く。
米軍機による軍需施設のみならず主要都市への無差別爆撃の激化と極端な食糧難という現実に、国民の生活は精神的にも肉体的にも疲労困ぱいの極に達していた。それは同時に、戦争の長期化と苛酷さに耐えられなくなった証である。人間としての限界を示すものであった。以下「日本憲兵正史」(全国憲友会連合会本部刊行)などを参考にし、一部引用する。
「日本憲兵正史」は記述する。「憲兵も人間であり、戦時下の苦しい生活は民衆と少しも変わらない。国民の苦しみを理解することは出来るが、さりとて軍人としては戦争遂行への職責を果たさなければならなかった。ともすれば崩れがちになる戦争意欲は、やがて厭戦気運を運生みがちであった」。
「これに対して、憲兵は国民の反戦思想から平和思想への拡大を恐れ、それらの流言飛語に対する取り締まりを強化しなければならなかった。しかしながら、軍部がいかに決戦を叫び、国民の士気を高めようとしても、既に国内ではひそかに戦争終結への工作を進める一群があった。それらが一般国民ならば、単に軍事上の造言蜚語罪として取締る程度であったが、これが元首相らの重臣及び外交官、さらに国内親英米派となると様相を一変してくる」。
安心、それが最大の敵だの他の記事
おすすめ記事
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/04/22
帰宅困難者へ寄り添い安心を提供する
BCPを「非常時だけの取り組み」ととらえると、対策もコストも必要最小限になりがち。しかし「企業価値向上の取り組み」ととらえると、可能性は大きく広がります。西武鉄道は2025年度、災害直後に帰宅困難者・滞留者に駅のスペースを開放。立ち寄りサービスや一時待機場所を提供する「駅まちレジリエンス」プロジェクトを本格化します。
2025/04/21
大阪・関西万博 多難なスタート会場外のリスクにも注視
4月13日、大阪・関西万博が開幕した。約14万1000人が訪れた初日は、通信障害により入場チケットであるQRコード表示に手間取り、入場のために長蛇の列が続いた。インドなど5カ国のパビリオンは工事の遅れで未完成のまま。雨にも見舞われる、多難なスタートとなった。東京オリンピックに続くこの大規模イベントは、開催期間が半年間にもおよぶ。大阪・関西万博のリスクについて、テロ対策や危機管理が専門の板橋功氏に聞いた。
2025/04/15
BCMSで社会的供給責任を果たせる体制づくり能登半島地震を機に見直し図り新規訓練を導入
日本精工(東京都品川区、市井明俊代表執行役社長・CEO)は、2024年元日に発生した能登半島地震で、直接的な被害を受けたわけではない。しかし、増加した製品ニーズに応え、社会的供給責任を果たした。また、被害がなくとも明らかになった課題を直視し、対策を進めている。
2025/04/15
生コン・アスファルト工場の早期再稼働を支援
能登半島地震では、初動や支援における道路の重要性が再認識されました。寸断箇所の啓開にあたる建設業者の尽力はもちろんですが、その後の応急復旧には補修資材が欠かせません。大手プラントメーカーの日工は2025年度、取引先の生コン・アスファルト工場が資材供給を継続するための支援強化に乗り出します。
2025/04/14
新任担当者でもすぐに対応できる「アクション・カード」の作り方
4月は人事異動が多く、新たにBCPや防災を担当する人が増える時期である。いざというときの初動を、新任担当者であっても、少しでも早く、そして正確に進められるようにするために、有効なツールとして注目されているのが「アクション・カード」だ。アクション・カードは、災害や緊急事態が発生した際に「誰が・何を・どの順番で行うか」を一覧化した小さなカード形式のツールで、近年では医療機関や行政、企業など幅広い組織で採用されている。
2025/04/12
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方